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”メンテ難民”を出さないために

今日は本社サーバーのメンテでアクセスできない時間帯があったり、連日の作業で少し疲労が溜まっていたこともあり、結局一日家で過ごすことに。たまにはこういう日も必要です。

とはいえボーっとしていても仕方ないので、最近調子がイマイチだったCDプレーヤーの確認など。CDプレーヤーの故障は大きく光学系(ピックアップ)の性能低下かメカ系(駆動系)の劣化が大半で、既に修理不可能あるいはメンテ期間満了というケースも多くなってきています。

私どもで扱ってきたCECのベルトドライブトランスポートはTL51Xが最初で、確か2007年頃でしたから恐らく製造中止から10年以上になるのですが、現在もオーバーホール可能というのは大変立派です。その点、国内メーカーのデジタル系製品は修理不可能のオンパレードになりつつある状況ですので、もし”なんか変だぞ…”ということがあれば早めに手を打っておいた方が良いかもしれません。

オーディオ全盛期の品物はコストもかかっていて品質も素晴らしいものが多く、いま同じものを作れといっても残念ながら無理、というものが多くあります。特にメカ系では量的要因でコスト回収が出来ないので自ずと安価な海外製を採用せざるを得ない背景もあります。
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これは90年代の某国産メーカーの中級クラスのCDプレーヤーですが、現在の市場環境で同じものを作ると一体幾らになるのでしょう…というくらい立派な造り。当時はTEACのVRDSが出たり、DA系ではDENONのアルファプロセッサーやPIONEERのレガートリンクがあったりと技術的にもビジネス的にもピークの時期でした。

このプレーヤーは演奏中、突如として電源が落ちるトラブルが散発的に発生していたのですが、調査の結果、電源部に一ケ所ハンダクラックがあり、機器内部の温度上昇によって接触不良となることが分かったので直ぐに復旧できました。仮にこれが光学系やメカ系のトラブルであれば手も足も出なかった訳で、引き続き使えることになったのは大変ラッキーなことでした。

今後オーディオ機器のメンテ難民が激増するのではないか…とはよく内輪で噂されることで、国内オーディオメーカーの製造背景の変化や体力の問題もありますが、せめて修理やパーツ供給が少しでも長く続くことを祈るばかりです。

そのあとは読書。これは昭和32年刊行の本で今様にいえばムックのようなもの。国産初のトランジスターラジオ、SONYのTR-55が昭和30年発売でしたから、すでに半導体の時代に入りつつあって真空管回路技術が最も成熟した時期でもあり、この頃の技術書には非常に高度で深い内容の記述が沢山見受けられます。
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結局のところ技術は市場規模の拡大とともに発展するしかない訳で、人材や資金を投入するためには背景に市場がなければ経済原理として成り立たない訳です。この後、各電気メーカーは一気に半導体にシフトして人材やコストを注入していきました。

この本は6,7年前にSV-EQ1616D開発の着想を得たきっかけとなったもので、私にとっての孫子の「兵法」のように重要なもの。純技術的な意味で当時の研究のレベルの高さに毎回目が鱗ですが、同時に定性(官能)評価の重要性についても強く言及しているところが素晴らしいと感じます。
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紙質も印刷も上質ではありませんが、当時の技術者の皆さんの自負や信念のようなものまで感じられるようで、いまの自分たちを省みるうえでもとても大切な何かを教えてくれているような気がします。

by audiokaleidoscope | 2024-07-14 23:59 | オーディオ

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