昨日と今日の午前中は組立代行品の出荷前点検、修理品の品質確認, 認定中古出品(候補)品の査定…などなど。毎日同じ品物の同じ工程を何百回やるのは大変だと思いますが、わたしの仕事は一点一様。同じ製品でも全て異なる世界なので飽きるどころかすべてが新鮮な体験であり勉強でもあります。
まずは査定関係で一例ご紹介しておきますと...

出荷件数は多いですが買取依頼件数は少ないSV-S1616D。今日診させていただいたのはPSVANE WE300B, Mullard GZ34, Arizona Cap.仕様です。内部的には少し手を入れたい箇所がありますが、人気機種でもありますので買取らせていただいて、次の主(あるじ)のもとへ万全の状態で嫁げるよう、しっかり整備させて頂ければと考えます。

これはTU-8850 / Arizona仕様の組立代行品出荷前点検。この個体は真空管なしでの組立代行依頼案件でしたので複数の出力管(KT88 / KT150等), 複数の動作モード(UL / 三結, NFの有無)でデータを取っていきます。
TU-8850はKT170 / 三結でお使いの方が多いですが、上の写真のKT150 / ULもお奨めです。8Ω負荷で15W出力の大パワーと約30dBのハイゲインでジャズやロックをバリバリ鳴らしてくれそうです。
続いて修理案件の品質確認。

当社オリジナルアンプ歴代最小モデルのSV-16K。PCL86シングルで1.6W / 8Ωのミニアンプですが、個人的にも愛着のある機種です。ソケットのコンタクトがやや緩慢だったり、真空管の一本がやや暴走傾向だったりしましたが、元の造りがしっかりしているので大事には至っていませんでした。生粋のオーディオ女子渾身の作品です。

そして今日の最後はSV-3(前期)。セカンドユーザーさんからのメインテナンス依頼で、恐らくお客さんも来歴や詳しい状況は分かっておられないと思いますが、増幅管がSvetlana 6N1Pであることと、回路定数から恐らく2002~2004年頃のキット組立品です。
いわゆる経年劣化対策が中心でしが、この個体には見たことのない対策が施されていました。

謎の青色の塗布剤が施されています。よく見ると金属部分や回路部品の特定位置、とくにヴォリューム系の軸などに塗られているので、何らかの意図があってのことであることは明白です。
その昔、CDの外周部に特殊な塗料で緑色に塗ると高音質化が図れるという”塗るアクセサリー”がありましたが、この青色塗料については全く知りませんでした。そこでSNSで写真をアップして”これって…?”と情報を集めたところ、直ぐにレスポンスがあって、やはりオーディオや車などを対象とした音質改善, 振動対策系薬剤のようでした。
音質上の差異(Before / After)は私の耳には明白とまでは参りませんでしたが、この手の対策は塗ったご本人が一番その効果の有無を知っておられる訳で、カップリングコンデンサー等にように信号が通る直接受動部品でなく、今回の対策のような間接受動部品は更に深い世界といえます。
こういう何らかの対策 / 改変個体が中古市場で流通しているのは、或る意味で私どもにとって織り込み済で、10台セカンド品が入ってくると大半は何らかの”変化”が起きているのが普通です。幸い腐食等には至っていませんでしたので塗られた状態のまま完了とさせて頂きました。
明日も引き続きこんな感じで作業が続いていきます。集中して気がつくと何時間も過ぎている…そんな充実した毎日です。