300Bフィラメント片切れ
2024年 07月 05日
これはSV-38T / PSVANE WE845仕様のオーバーホール上がり品です。すごい存在感ですね。

シャーシ内部を確認したところ電解コンデンサーの半数以上に液漏れと膨満が見られた典型的な経年劣化の状況でした。特に高電圧でシャーシ内部の温度が高くなる送信管アンプで起こりがちな事象です。20年選手では音に異常なくとも全ての電解コンデンサーをリフレッシュしても良い時期に来ているでしょう。
今回の事例のように通電時のプツプツあるいはブツブツ音はコンデンサーの劣化兆候の典型的事例の一つですし、ハム増加は特に電源部あるいはフィラメント平滑部の容量抜けが原因であることが多いので、連鎖故障が起きる前に早めのお手当が望ましいといえます。
今回の事例では初段Western Electric 311Bで一本, ドライブ段KR300B Baloonに一本の問題が検出されました。311Bは耳で聴いて明示的に異常が分かるレベルではありませんでしたが、300Bは明らかに片側の利得が低く誰が聴いても分かるレベルでしたので300B単体で確認を行います。
環境を替えて確認してみます。別のアンプ(SV-501SE)にKR300Bを挿して通電したところ、やはり規定Ipの1/2程度しか電流が流れません。Ip=0の場合はフィラメント切れ、暴走(Ip振り切れ)の場合は発振あるいはグリッドとフィラメントの管内短絡などが疑われる訳ですが、今回は暴走でもなければゼロでもないので、増幅の基礎となるフィラメント周りに何らかの問題が潜在していると想像できます。
少し暗い場所で通電し上からフィラメントの状況を目視で確認したところ…ああ、やはり、フィラメントの片切れです。


今回お預かりしたSV-38Tは300Bフィラメントの平滑回路がかなり劣化していましたので、もう少し早めに手当てしていれば片切れを回避できた可能性もあります。
300Bフィラメントは製造上, 構造上の事由で発生度合いが変化する場合もあります。最初期の曙光300BS-B(ナス管)ではフィラメントの屈曲部で断線することが多かったですし、Svetlana 300Bでは特にDC点火アンプでフィラメント自体の痩せから断線に至るケースが多かったと記憶しています。