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Silent Majority

”10人中5人が旨いと思ってくれるラーメン屋は大繁盛店”…なんて昔から言ってきました。裏返せば10人中10人が旨いと思うなんてことはあり得ないのです。

今日たまたま同業者の方と喋っていてネットで酷い書き込みをみて非常に落ち込んだという話を伺いました。現代は一億総評論家なんて言われ方をして、SNSでエゴサーチなんかした日には反語的, 否定的書き込みに溢れていますが、個人的にはそういう意見も受容しつつも、あまり気に留めることはありません。

何故なら26年この仕事を続けてこれたのは、私たちを応援してくれる多くのSilent Majority(サイレント・マジョリティ:積極的に発言することを好まない大多数の人たち)の存在があればこそ、というユーザーへの信頼と感謝があるからです。

例えば帰りがけにレジで”この店の味は好きじゃない”と敢えて言って帰るお客さんもなかには居るかもしれません。でもそれを気にして自分らしさを失うことの方が大きな損失です。何も言わなくても”この店の味が好き”と思って通ってくれるお客さんがいるからお店が今日も続けられると前を向けばよいのです。

他人の顔が違うようにラーメンの味もオーディオの音も千差万別。作る人が違うのだから同じ味(音)になる筈がありません、ましてやオーディオは複数の機器が複雑に影響し合って最終的な音を作り上げる訳で、たまたま選んだ機器が自分の好みの音に鳴らなかったとしても、それには様々な要因や背景があることを私たちは理解べきです。

例えば今日の試聴。愛機のMarantz 7オリジナルとMcIntosh MC240を雨の中お持ち下さいました。いずれも非常に程度の良い個体でコンディションも万全です。
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試聴室の4344を使ってデモ機のSV-310とSV-8800SEを比較用に使い、順列組合せを替えて計四通りの音を楽しまれました。
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同じ真空管プリ + 多極管ppの組合せでも出音は全く違います。Marantz + MC240ではミッドバス帯域が強調されたフルレンジ的鳴り方で音の粒は大きめ。オケのTuttiではやや粗い感じもなくはありませんが、密度感という点では非常に魅力的です。

Marantz + SV-8800SEは高域の倍音が加わり空間の拡がりと音の粒立ちの細やかさが際立つ感覚ですが、聴きようによってはMarantzらしさが希薄になったという言い方もできるかもしれません。パワーアンプのF特が3倍以上も違う訳ですので、音の支配力のバランスが大きく変化した結果です。

次にSV-310 + MC240では低域の弾む感覚で音楽の躍動感が増します。ややモノクロ的な渋さを良しとするならばオールドJAZZなどには最高の組合せかもしれません。

最後に聴いたSV-310 + SV-8800SEは、実際のこの組合せで使っておられる方が沢山おられ、お客さんも”いちばんマッチングがいいですね”と言って下さいました。よく言えばSV-310の音の濃さとSV-8800SEの伸びやかさが上手くメランジしているといえるかもしれませんが、人によっては真っ当過ぎて面白みに欠けると感じるケース(音源)あるかもしれません。

…事々然様に物事は表裏一体。光が当たれば必ず陰も出来る訳で、どこに注目し、どう感じるかで評価も真逆になるのは至極当然です。料理人も私たちオーディオ屋もレシピ本に書いた通りでなく、自らの感性と技術を信じて暖簾を下げている訳ですから、稀にいるLoud Minority(ラウド・マイノリティ:声高に否定的意見を述べたい少数派)に過度に惑わされる必要はないと伝えました。

嫌いな人がいたっていいじゃない...それよりも自社のアンプのファンを大切にしてあげて下さいよ、と言いながら何だか自分に言い聞かせているような気持になった今日でした。積極的に発言することを好まない大多数の人たち(=Silent Majority)を静かに信じて今日も愚直にモノづくりを続けること…わたしたちには結局それしか出来ない訳ですから。



by audiokaleidoscope | 2024-07-01 23:59 | オーディオ

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