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中古ショップからのメンテ依頼

明日は所用で外出のため、今日が個人的な6月の締め日。修理品の出荷前点検を終え自分的には今月期限の案件はクリアすることが出来ました。

今日の案件はいずれも少々大変でした。いずれも某中古オーディオ店さんからの依頼案件です。数多(あまた)ある中古屋さんで、買い取った製品を私どもで純正整備を行って再販されているのはこのお店のみ。決して安くない修理代をかけてお客さんの信用に資する商売をされている姿勢はとても素晴らしいと思います。

まずはSV-501SE。パッとみただけでは分からない改変が随所で行われていました。私どもでは基本改造品は原状復帰つまりデフォルト状態に戻させていただくことを修理条件とさせて頂いています。
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我流のアップグレードは往々にして”銘木で作った掘っ建て小屋”的な傾向があります。自己責任ならまだしも、それらが二次市場に出て当社製品として流通している場合があるのが中古の怖いところです。それがC to Cだけでなく店経由でお客さんに渡っている事例があるのも残念ながら現実です。

この個体は原状復帰しただけでは済まず、300Bフィラメント(5VDC)を供給している基板にも問題がありました。この501SEは前期仕様でフィラメントDC点火基板のパーツは当社にも市場にもありません。恐らく普通の修理屋さんならお手上げという状態だったと思いますが、苦肉の策としてSV-91Bの回路を流用して設計変更を行い性能を回復させることが出来てお店にお返しすることが出来ました。

そしてもう一台はSV-91B。同じお店からの依頼案件です。写真で見ていただいたとおりパッと見かなりきれいです。
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個体番号から履歴をトレースすると2017年当社製作の完成品であることが分かりました。お店からの申し出は「電源ON後にノイズ発生。真空管を抜き差しすると一旦直るがL/Rのバランスがおかしい」というもの。

詳細確認を行うと初段, ドライブ段310Aソケットの篏合がすべてグラグラに緩んでいて電気的に4本の310Aのうち2本に異常が検出されました。想像ですがこの個体は複数ユーザーの間を巡り巡った過程で恐らく310Aの誤方向挿入が発生しソケット接触が劣化、且つその状態で通電された結果310Aに異常が発生した可能性が高いと推測されます。

310Aを使った方ならお分かりだと思いますがヒーターのピン2本が太いので挿入方向が特定できる訳ですが、知らずに力任せに挿入してしまうと刺さってしまいます。その辺りの事情を理解されていない方が誤挿入をされてアンプが不調となった結果中古市場へ流れたとすれば残念なことです。

対策としてはピンの増し締めだけでは対応できずアラルダイト(エポキシ)接着剤でグラグラのソケット金具を再固定して310Aを2本交換して復旧しました。ヒーター電圧調整用のドロッパー抵抗も損傷していたので、かなりのダメージが発生していたものと推定できます。

…今回は依頼いただいたお店の良識によって2台とも電気的に完全な状態に回復できたことは大変有難いことでした。

先日の91Bもそうですが音が出ちゃえばOKという判断によって不具合品が市場に流れるのを少しでも回避するお手伝いをするのもメーカーの重要な仕事のひとつ。仮に二次流通品であってもきちんとサポートするのが製造者の責務です。



by audiokaleidoscope | 2024-06-27 23:59 | オーディオ

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