なぜキットを?
2024年 06月 22日
要約すると”配信音声はSV-91Bの出力をミキサーに返しているというのは間違いないですか?”というもの。結論的にはその通りで、MUSIC BIRD番組収録時と同じ方法、つまりSV-91Bの出力を8Ωのダミーロードを介してラインレベル信号に変換してミキサーに送り、当日の会場とyoutube配信いずれもSV-310EQ + SV-310 + SV-91Bのリアル真空管サウンドでお楽しみ頂いたことを説明しました。
するとその方は”自分もプロ組立品のSV-91Bを使っているが、常時ジーという感じのノイズが出ていて音楽が鳴っている時は気にならないが、無音時は耳障りで対策が必要。また時々バチっと大きなノイズが出る”とのこと。
カルテではその方の履歴にヒットしないので確認すると、某大手中古ショップで”プロ組立品”として販売されていたものを購入されたとのことでした。
念のため真空管を左右入れ替えていただいたり、入力にショートピンを挿して通電頂いたりして状況を確認いただいたのですが、どうやら原因はアンプ本体と思われたので、当社でお預かりたのが下のアンプです。
プロの方が組まれたということから組立後の性能確認も行って頂いていると思われましたが、追認すると各真空管へのヒーター, プレート, カソードへの供給電圧こそ正常ですが、仕上がりのゲイン, 周波数特性, 出力, 残留ノイズ等すべて規格外です。お客さんが仰るように誘導ノイズが特にひどく10mV前後のジー音が常時聴こえるような状態で、これではとても正常とはいえません。組立マニュアルには基準特性が書かれていますが、恐らく組んだ方はPGKの電圧だけ当たって完了とされたのではないかと推測します。
竹ピンセットチェックを開始した直後、すぐに気づいたのは端子台周辺の配線が左右chともされていない(配線忘れ)が六ケ所, 未ハンダならびにイモハンダが数か所検出されました。よくこれで音が出ていたものだと思われる状態です。
不具合箇所を含めた全体点検の結果、すべてのパラメータで正常値となり残留ノイズもノイズシールド追加時で0.2~0.3mV(入荷時の約1/30程度)まで下がりました。その他カソードバイパスコンデンサーの取付位置間違いによって電流帰還がかかっていたことによるゲイン異常も修正され出力10.5W, ゲイン28.5dBを回復しました。きっとお客さんは”これが同じアンプか!?”と思われることでしょう。
ほとんどのお客さんが、散々苦労され、何度も何度も組立マニュアルを見直しながら自分のミスを発見し、克服した結果世界に一台の愛機を完成され、自分の作ったアンプで音楽を聴く感動に浴していらっしゃる訳です。私どもが最重視しているのはそのプロセス(モノづくり)の醍醐味そのものです。
最初から100点満点とれる筈がありません。先日のbefore / after事例もそうですが、皆さん苦労しながら腕と感性を磨いて少しづつステップアップされます。今日も多くの方がキットと格闘されていると思いますが、人間は間違うものだという前提でもう一度見直していただければと思います。それが期限も査定もない趣味の世界の最大の楽しさの一つです。