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モノづくりの責任

修理の依頼内容は多岐に亘ります。なかにはずいぶん前に製造終了になった製品に関するものもあります。
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これはkit LS3/5a最初期型(木目)のウーハー。依頼主さんのカルテでは購入は2008年の真空管オーディオフェアのデモで音を聴いて下さってお求めいただいたもののようです。先日ご連絡があり、トランジスタDC(直結)アンプの調整中に過って直流をスピーカーに印加してしまってウーハーを壊してしまわれたとのこと。

アンプが原因でスピーカーを飛ばす(故障に至らしめる)ことの最大の要因がこのDC(直流)印加と過大入力です。今回は半導体アンプだったのでアッと思った時には既に終わってしまっていたと思われます。スピーカーを飛ばす迄はいかなくても、中古の半導体パワーアンプでオフセット調整不全でDC成分が出ていることもありますので、購入時にオフセット調整はしてますか?と訊かれるとよいと思います。

真空管アンプの多くには出力トランスが装備されていて、これがDC成分をカットし交流成分(つまり音楽信号のみ)を二次側に流してくれますから、仮に何かトラブってもDC成分で大切なスピーカーにダメージを与えることが格段に少ないのは大きなメリットです。OTLアンプ等出力トランスがないアンプの場合はスピーカーを接続した状態での調整はリスキーですので注意しましょう。

話を戻してこのウーハー、パーツストックとしての在庫は保有しておりませんでした。ただ過去の買取品のなかには壊れていて正規の買取は出来ないものの、パーツ取り用途で買わせて頂いている場合があり、たまたまラッキーなことにツィ―ターが壊れている同世代のLSのストック(シルクドームツィ―ターをお孫さんが指でぐちゃっと押し込んで断線して再販不可能)があったので、そこからウーハーを外し単体で性能確認してみました。
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アンプにつないで40Hz~数100Hzまで正弦波信号をスウィープ。まずは耳で各帯域における能率差がないか、エッジの劣化で分割振動を起こしていないかを確認していきます。
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つづいて定量的に個体差がないか確認していきます。非常に揃っていてレスポンス, 能率ともに差異がないことが分かりました。

お客さんには”中古品からの外し品なのでこの程度の金額でいいですよ”と申し上げたら、お客さんは製品定価以上の修理代を払うつもりだったと仰られ、大切に使って頂けていることを大変嬉しく思った最近のトピックでした。

誰かにお金を払うとき、相手の時間を自分のために割いてもらい、自分がもっていないインフラ(環境)を借りて、ノウハウを提供いただけること、これらへの対価だと定義するのが一般的でしょう。オーディオ製品の場合はメーカーさんにもよりますが、パーツがない、あるいはその他の理由で修理できない場合は代金は頂きません(成果物報酬という考え方)の会社さんもあります。

モノづくりに対する責任を無期限に果たすことは不可能ですが、できる間はあらゆる方法をで対処することが、私たち製造者の重要な責任の一つと考えます。




by audiokaleidoscope | 2024-06-14 23:59 | オーディオ

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