納品から二ケ月。皆さんも経験があると思いますが、或る程度使っていると”もうちょっとここをこうしたいなあ”という部分がが出てくるのが普通。それを踏まえてスピーカーであればセッティング位置を替えたりアッテネーターでバランスをいじったり、なかにはケーブルを替えてみたりと色々ご自身で触って自分色に染め上げていくわけです。
スピーカーは基本ウーハーがスルー(固定)。ミッドとハイにアッテネーターが装備されているというのが通常のスタイルです。つまり音楽の基本である低域があらかじめ決まっていてそのうえに台形状に中期, 高域を重ねていくという感覚で調整が可能です。曲を聴きながら直感的にバランスを替えられる大変合理的な方法です。
対して下の写真のAvangarde DUO GT。これがなかなか難敵で、基本中域, 高域は固定。1kWアンプ内蔵のパワードウーハー側でバランスを取るという馴染みの薄い調整方法です。これまで納品後, 一ヶ月点検とスピーカー本体側で調整できることはさまざまトライしてきました。
Avangardeの主であるSさんはトランペットを吹く方で、楽器の生音に日々触れておいでなので、オーディオの音にも非常に敏感です。気になることがあると都度電話で教えて下さるので、今日の二ケ月点検では従来の調整方法から更に突っ込んだ形で調整が必要と考えて、それなりの準備をしてお伺いしました。

これが今日の第一段階。何をやっているかというとAvangardeとPCをルーターに繋いでドイツにあるAvangardeのサーバーにアクセスし各種パラメーターを調整するというもの。上の画面はいわゆる標準モードでデジタルグラフィックEQ的な操作を行うことで最適バランスを得るという考え方です。
通常はこれで十分なのだろうと思いますが、上の画面で調整できるのは30Hz~330Hzのみ。中高域は基本調整範囲外です。他方、Sさんのニーズは全体バランスはもちろん、部屋のアコースティックとのマッチングも含まれていましたので、通常の調整ではとてもカバーできるものではありませんでした。

そこで出てきたのが上のExpert Mode(エキスパート モード)。これは専用パスワードでアクセスしないと入れない画面で、輸入代理店さんが納品時に特殊な調整が必要と判断した場合にのみ使う設定画面です。330Hz以上の帯域も含めて非常に細やかな調整が可能である反面、何でもできてしまう怖さもあることから一般の方にはアクセスが許可されていないのかもしれません。今回とくにお許しいただいて禁断の部屋に入らせていただいた感じです。
調整はたいへんでした。メモを取りながらさまざまなパターンを試しながらSさんのご意見を伺いつつ、少しづつスウィートスポットを探していきます。或る帯域を0.5dB上げたり下げたりするだけで大きくバランスが変化する超高能率, 広帯域スピーカーですから感覚を研ぎ澄ませて4時間半かけて”これなら”という調整ポイントを見つけることが出来ました。

いままでさまざまなスピーカーを取扱ってきましたが段違いに難しかった(奥が深かった)DUO GT。アナログ的なアプローチでは対処できない大物の奥深さを感じた今回のエキスパートモードでした。非常に勉強になりました。