昨日、名古屋で一緒に中古レコード店を回ったお客さん。最近念願のターンテーブルデビューを果たし、フォノEQもSV-EQ1616Dを新調され、カートリッジも決まって、あとは音源のみ…というタイミングで盤選びにお供した訳ですが、一夜明けて早速SOSが飛び込んできました。
お使いのターンテーブルはお知り合いから譲ってもらったというベルトドライブ。説明書通りセッティングし、針圧も合わせたのに音の揺らぎがある…ということは先ず駆動系つまりモーターの回転数が安定していない可能性があると考えるのが妥当です。
今日は会社に居たので、とりあえず作業場にモーターと電源だけ持ってきていただいて回転数をチェックしてみたのですが、モーター自体に問題ありません。こうなると少々厄介です。ターンテーブルのセッティングは拘ると結構奥が深い世界。色々と調整をとりながら追い込んでいく必要があります。まずこれだけは確認しておきましょう…というポイントを改めて確認してみたいと思います。
いろいろと考えてみたのですが結論がでないので、現地現物の教えに従いお客さんの家に伺った結果、問題が特定でき対策も完了して一件落着となりました。ただ作業に集中するあまり、現場で写真を撮るのをすっかり忘れてしまいましたので、拙宅で同じプロセスを再現してみました。
現場での最初に確認したのはプラッターの動きでした。ストロボスコープを載せて見てみると確かに縞々の動きが変です。ベルトドライブ形式におけるモーターの役割は基本的に起動トルクを与えることで、プラッターが慣性モーメントによって滑らかに回転すれば今回の問題は起こらない筈です。そこで私どもが自社のターンテーブルをメインテナンスする時に必ず行うスピンドル周りの清掃と注油を行うことにしました。
写真は家のThorens 124MkII。SP盤再生専用でかれこれ10数年使ってきたものです。これはベルトドライブとは駆動形式が異なりますが、やることは同じです。まず良質な綿棒でスピンドルの軸受け側内部を徹底的に清掃します。同時にスピンドルの表面も汚れを拭き取っておきましょう。
軸受け内は本来適切に注油され塵芥類が全くないことが求められる訳ですが、何年も放置されていたり摩耗によってスピンドルと軸受け間に僅かな隙間が出来ていたりすると綿棒の先端部がまっ黒になる場合があります。車でもオイル交換を怠ると驚くほどオイルが汚れ量自体も減るのと同じです。
我が家では定期的に清掃を行っているので綿棒の先端は僅かに黄色のオイルが染みる程度ですが、ひどいものになると綿棒の先端部がスラッジ(汚泥)状のドロドロになります。この場合はまず汚れたオイルに含まれた細かい金属粉等を完全に取り除かないといけません。この金属粉等によってオイルの粘性が失われ摩擦抵抗が生じているかもしれませんので、汚れを絡め取る要領で丹念にオイルを除去していきます。
綿棒を2~3本使って清掃を行い、清掃が完了したら純正オイルを1滴、せいぜい2滴注油します。仮に純正オイルがない場合は
市販の汎用品でも問題ありません。注意ポイントは二つで①軸受け内に綿棒の繊維を残存させないこと ②適切な注油量を守ること の二点です。
作業が終わったら再度プラッターを設置していくわけですが、機構的に劣化していない場合はプラッターが定位置まで沈み込むまでに数分かかる場合があります。決してむりやり押し込むようなことはしないでいただきたいと思います。
お客さんの家でも上と同じ手順でスラッジを除去し、純正オイルを注油してプラッターを再設置後、15分ほど手回しで馴染ませたあと再通電したところ、ワウフラッター的な揺らぎは解消され問題なく再生できるようになりました。オイルの劣化もありますが、感覚的には軸受け内に金属粉あるいはゴミが残っていて摩擦抵抗を生じていたと推定します。
乗りかかった船でしたので、ついでに他のターンテーブルも清掃と再注油を行いました。2月にやったばかりでほぼ汚れ自体がない状態でしたが再確認して気分すっきり。お客さんも今頃は昨日の戦利品を良い音で聴いておられることと思います。