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真空管プリ + 半導体パワー(プリメイン)使用時の心得について

今日親しくさせていただいているお客さんとのメールのやりとりの中で皆さんにも共有させて頂いた方がいいなと思ったことがありましたので、少し書いておきます。或いは以前にも同様のエントリーがあったかもしれませんがご容赦下さい。

例題として、真空管機器と半導体機器を組合わせて何か問題がある?…という質問がお友達からあったら皆さんはどう回答されるでしょうか?

まずケース①として「半導体プリ + 真空管パワー」のパターンを想定してみます。特殊な事例を除いてこのパターンで問題となることはほぼないと申し上げて良いでしょう。電気的には半導体プリの出力インピーダンスは十分に低く(数Ω〜600Ω程度)、対して真空管パワーアンプの入力インピーダンスは十分に高い(50kΩ〜100kΩ)と想定出来ますので、電気的にはむしろ良好な組合せと言って差支えありません。
真空管プリ + 半導体パワー(プリメイン)使用時の心得について_b0350085_04532514.jpg
これは拙宅におけるMcIntosh C34V + MC30(下段)の例で、これで現在もJBL C37 Rhodesを鳴らしていますし、Quad 33でオートグラフを鳴らす場合もあります。以前にもMark Levinson 26LやGoldmund Mimesis 27.3MEをプリに使ってきました。注視すべきは音色上の組合せの良否くらいで電気的な背反事項はないと申し上げて良いでしょう。

ではケース②「真空管プリ + 半導体パワー」の場合はどうでしょうか?この組合せも幾つかの注意事項さえクリアすれば何ら問題なく楽しむことが出来ます。

ケアすべきは真空管プリ側の出力インピーダンスを如何に低い状態で維持するか、これは非常に重要な問題です。以前「Marantz7あるある」というタイトルのエントリーが大きな反響となりましたのでご記憶の方もいらっしゃるでしょう。

ポイントとしては”ロー出しハイ受け”の原則を堅持するために真空管プリには幾つかの注意事項がありますよ、という事です。

今日はこれに派生した別の使い方を想定してみたいと思います。ケース③「真空管プリ + 半導体プリメインのパワー部」というパターンです。

皆さんが高級半導体プリメインをお持ちだったと仮定します。この場合アンプの背面を確認すると下の写真のようになっているかもしれません。
真空管プリ + 半導体パワー(プリメイン)使用時の心得について_b0350085_04271424.jpg
製品の形式としてはプリメインでも、電気的にプリ部とパワー部をセパレートできる非常に便利な機能です。

実際私どものお客さんでもA社やL社のプリメインを使っておいでで、次なるステップとして真空管パワーアンプを導入したいという方には積極的に上の写真のPRE OUTから新規導入の真空管パワーアンプを繋いでお楽しみ下さいとお奨めしています。現用の入力機器をそのままの状態で使え、リモコン機能も維持でき、気分次第で元の状態に戻すこともできるたいへん有効かつ便利な使い方が可能です。

気を付けたいのは上の写真のMAIN INを使って真空管プリと接続する場合です。繰り返しになりますが基本的な問題がある訳ではありません。幾つかの条件をクリアすべきという事だけです。

まずは使用する真空管プリの出力インピーダンスが十分に低いこと。これはケース②と全く変わりません。適切に設計されている真空管プリは出力インピーダンス600Ωあるいはそれ以下ですから、一般的な半導体パワーアンプの入力インピーダンスを20kΩと仮定しても十分なドライブ力が期待できるからです。

ただし一部の真空管プリでは出力インピーダンスが1kΩ以上の場合があります。その場合は半導体パワー側の入力インピーダンスとの差分が20倍以上あることを確認しておきましょう。仮に差分が10倍を切るような状態では真空管プリが半導体パワーを十分にドライブできず、音が曇ったり周波数特性が著しく劣化した状態となる場合があるので要注意です。あとは半導体パワー部のゲインが高すぎてプリのヴォリュームが上げられないというケースが考えられますが、パワー側でゲインを下げられる機能(アッテネータ―)があれば積極的に活用すべきです。少なくとも常用でプリのヴォリューム位置が時計の9時以上が推奨されます。

今日お客さんとのやりとりで問題となったのは、SV-Pre1616Dと国産有名メーカーの半導体プリメインのパワー部の組合せにおいて半導体アンプ側の保護回路が動作する(ことがある)という事例でした。

半導体アンプの入力部の保護回路の設置には幾つかの目的があると思いますが、その一つにDC(直流)混入の防止が挙げられます。入力信号にDCが重畳していると認識すると保護回路が作動し信号を遮断してアンプが不安定になることを回避する訳で、それ自体は非常に有効な施策です。

ただしSV-Pre1616Dのように大容量のコンデンサーで終端され、数Hz~100kHz以上の非常に広帯域な周波数特性を有する場合、稀に半導体アンプ側の保護回路がSV-Pre1616Dからの超低周波出力信号をDC漏洩と誤認して保護回路が動作する可能性があるのです。

この現象は半導体アンプ側の設計思想に依存するもので、過去私どもでお客さんから相談を受けたのは国産メーカー1社のみで、他のメーカー製品との併用で伺ったことはありません。何Hzを閾値としているかは分かりませんが、対策としては真空管プリ側の終端容量を下げてしまう(例えばSV-Pre1616Dの場合は4.7uF→1~2.2uFに変更)することで保護回路の動作を回避できる可能性が高いでしょう。

要は真空管プリアンプ側の低域カットオフ周波数を上げる(=低域側周波数特性の下限値を上に動かす)ことになります。同時にプリアンプの出力インピーダンスも上がることになりますので過度に容量を下げるのは得策でなく、最低でも0.47uFは維持すべきです。

敢えて言えば、これはメーカー間の文化の違いであって勿論半導体パワー側に何の問題もなく、逆にしっかりした安全思想をお持ちとも言えますが、SV-Pre1616Dにも罪はありません。万一こういう現象に直面しても面喰うことなく冷静に対処いただいて問題ないというお話でした。


by audiokaleidoscope | 2024-05-25 23:59 | オーディオ

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