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還ってきたMID

凡そモノづくりに携わる人にとって製品が返ってくるのはつまり返品、忌むべきこととして捉えられがちですが私どもは逆。

特にそれが特に手塩にかけた思入れのある品だったりすると、もう返ってきたでなく、還ってきた或いは帰ってきたという嬉しい気持ちになることもあります。

これもそんな一つ。久しぶりに実家に帰ってきた子供を迎える親の気持ちに近いかも。
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このスピーカーを作ろうと思ったのは確か2008年ごろだったと思います。ダイヤトーン郡山工場と私の高校の先輩でもあった故 井上卓也さん(評論家)がタッグを組み”コーネッタ”という名前で恐らく80年代初頭に市場に出ていたスピーカーを復刻できないかと考えました。

コーネッタは確か当時キット形態で頒布され外装的にもシンプルなものであったと記憶しています。安曇野の家具屋さんの協力を得てよりTannoy的な意匠と望みうる最高の材料で仕上げたのが私どもの”MID”でした。イメージ的にはTannoy Autographを少しダウンサイジングし、日本の8畳態度のリスニングルームでも使えるMIDサイズのフロアスピーカーという感覚です。断面的にはAutographと同じコーナー型ですので部屋の角に収めればそんなに圧迫感はありません。

最初の頃はユニットがなく、Tannoy Monitor Gold IIILZかHPD295を支給頂ける方向けの特注品として試行的に受注開始したところ、これがびっくりする位の反応があったこともあり、その後ユニット自体も復刻したのがSunvalley 10inch Coaxialでした。
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一つの製品を企画し、試作を含めた開発を経て量産, 市場投入まで早くて1年、かかるものだと2年以上の時間を要します。このスピーカーにかかった時間と開発コストは通常製品の比ではありませんでしたが、それでも必ず実現させたいという強い想い、そして当時の環境(周囲の協力と支援)がありました。その意味でも忘れられない製品の一つです。

今回還ってきたMIDにはお土産がついてきました。
還ってきたMID_b0350085_04161191.jpg
この布帛がついた台座は本体の下のハカマ的なものですが、これは私どもから供給したものではありません。ユーザーさんがMIDの制作者である安曇野の家具屋さんをご自身で訪ね、MIDと同じ材料で特注した一点モノです。まさに一体感のある素敵な台座ですね。

今後これをどうするかについては考え中です。試聴室のデモ機として置いておきたい気持ちも強い一方で、大切に使って頂ける方がいらっしゃればご提供しても良いという気持ちもあります。とりあえずユニットを新品に交換してウッド部分にオイルワックスを掛け、しばらくはゆっくりしてもらいたい、いまはそんな感じです。

ともあれ還ってきてくれて嬉しかったMIDとの再会でした。


by audiokaleidoscope | 2024-05-22 23:59 | オーディオ

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