きっかけは旧知のKさんから。SV-9(前期仕様)からノイズが出るようになったので6GW8 / ECL86を二本求めたいというリクエストでした。

SV-9T(前期)。手のひらサイズのプッシュプルアンプです。

6GW8はいまや結構な貴重品。6BM8の上位球的な位置づけな複合管で、EL84や12BH7と同じ位のサイズの管内に五極部(電圧増幅部)と三極部(電力増幅部)が高密度にレイアウトされていて二本でステレオアンプ, 四本でプッシュプルが出来る真空管技術の極致の一つです。
ただ現在生産されている6GW8はなく、入手できるものはヴィンテージのみ。20年ほど前に東欧製のヒーター電圧違いの姉妹球が放出され国内にも多数が流通したのですが、バラツキが大きく選別に非常に苦労したことを覚えています。
私どもが在庫している6GW8は松下NOSのQUAD(四本揃い), ペア在庫が上の写真の各種ブランド(例えば米GE, 仏CIFTE, 英HALTRON, 米RCA等)の混在品のみ。チューブチェッカ―では全数棄却値Gmをクリアしていることは分かったのですが、よりシビアにチェックするために修理依頼でお預かりしているSV-9TSE(後期仕様)を急遽メンテし、元々14GW8仕様になっていたのを実験用にヒーター電圧を6.3Vに変更して真空管選別機として使わせていただくことにしました。

これが後期タイプ(SV-9TSE)。前期仕様がオール手配線の難易度が高いキットでしたのでSEでは基板化して再現性を高めました。
参考(組立レポート)
まずは元の仕様(ヒーター12.6V)でメンテ完了。一ケ所ジャンパーとハンダ箇所を替えて6.3V仕様に変更させていただきます。

出力約7.5W / ch。左右別ブランド(Lch:HALTRON, Rch:GE)を無造作に組み合わせて通電しても左右ゲインも周波数特性もバッチリ合います。やはり全盛期の真空管技術は素晴らしいと認識を新たにした次第です。音質的にも14GW8よりも重心が下がってよりパワフルな感じです。

これは松下NOS。以前調達した東欧製14GW8は三極部のIpのバラツキが約200%(最小値と最大値の差が倍という意味)ほどでしたが、今回全数検査してみて松下6GW8は120%程度に収まっていることが分かりました。素晴らしい製造品質です。

100Hz, 1kHz, 10kHzのレスポンスも揃っていて歪率にも差異はありません。…こんな感じで全ての準備が整ったことをKさんにご連絡した後、ノイズの原因が実は真空管でなく入力ヴォリュームの劣化だったことが分かって無事修復完了したとお知らせを頂きひと安心。久しぶりに6GW8を触って以前にも増してこの球が好きになりました。
今回チェックした6GW8は今後のサポート用に大切に保管しておこうと思っています。