今日はGWに預かった
SV-310EQ(フォノイコライザー)のオーバーホール案件からスタート。
接点系洗浄, 機構系再締結, 通電検査, 真空管交換, 測定, エージング etcすべての工程が完了し新品同等のクオリティに回復して超スッキリです。
このSV-310EQは完成品専売商品。上のシャーシ内部をみると組立はそんなに難しくなさそう…なんでかな?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。事実ときどき”キットで購入したい”という方もいらっしゃいます。
ではなぜ完成品だけなのか…それには二つの理由があります。一つはワイヤリング。何度か以前にも書きましたがフォノEQはMMで40dB(100倍), MCで60dB(1000倍)ものゲインをもつオーディオ機器のなかでも最も高利得(高感度)な製品です。ちょっとした配線でSNが大きく変わることが想像できるでしょうか。信号系, アース系の引き回しの僅かな差異で大きく静特性が変わってきます。
そしてもう一つは真空管選別の難しさです。上記の通りたいへん高利得なフォノEQは真空管選別も大変クリティカル。別モデルSV-EQ1616Dでは真空管のバラツキが総合特性に大きく影響しないよう様々な工夫がされていますが、SV-310EQはずばり真空管の素性がモロに音と特性に出ます。
今日着手したこの個体でもPSVANE WE310AとTESLA E88CCの組合せはトータル20パターン以上試したと思います。適当にパパっと挿して測定すると左右ゲイン差2dB以上なんてこともザラにあります。
半日ちかくかけて真空管選別が終わって測定のあとエージングをやっているところ。他メーカーさんの製品も含めて一般的な業界標準ラインは左右ゲイン差1dB未満というところではないかと思いますが、個人的には0.3dBは切りたいと思って作業に当たっています。
これは2chタイプのミリバル(ミリボルトメーター)でL / R同時測定が可能な二針式のタイプです。ステレオ装置のゲイン差を看るときにとても便利で使わない日はないくらいですが、今日苦労して真空管を選別し順列組合せを替えた結果、左右ドンピシャになりました。
赤い指針と黒い指針が重なって一本の針に見えていることがお分かりになると思いますが、これを皆さんの家でやって下さいといってもまず無理。一種類何十本という真空管と精密測定環境がなければこの領域に達することは出来ません。だからこその”完成品専売”という訳です。
このLM86Bも完成品専売なのはパワーアンプながら無帰還, トランスドライブ、交流点火という非常に調整が難しい製品だからという側面があります。特にノイズ的追い込みの難しさは一般的直流点火アンプとは比べものになりません。
この個体は完全リビルドで真空管もすべて新品。バーンイン後のエージングもすでに8クール目(1クール10時間)に入りました。20時間程度で概ね落ち着きますが、私どもにとっても特別な機種のひとつですので思わず”もう一回”という気持ちになります。
キットにはキットとしての品質があり、完成品には完成品の品質があります。キットにはつくる歓びがあり、完成品には安心を買うという側面があります。私たちはそのどちらも大切にしていきたいと思っています。