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公開受入検査

今日はまずSV-S1628D / 845仕様のメインテナンスから。
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実はこれ、或る中古オーディオ店さんからの依頼案件です。全国各地に中古品を扱うオーディオ店があり、大手チェーン(フランチャイズ)店もあれば個人経営のお店もある訳ですが、当社製品に限らずサポート終了品を除く全ての製品を純正(メーカー)修理に出して再販している中古屋さんは、私の知る限りこの会社だけです。

逆にいえば他のお店は勘コツでメインテナンスされているのかもしれませんが、いずれにしても費用以上に信頼感を優先される姿勢はたいへん立派だと思います。
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これがメンテ後の内部。キット組立品でカップリングはJENSEN錫箔+銅箔の組合せであることから2018年~2019年の個体でしょう。

信号系抵抗がハイグレードカーボン, 一部電解コンが低ESR品に替えられており、制作技術もかなり高い方の作品とお見受けしました。このグレードなら当社認定中古品として販売しても良いくらいの品質です。

SV-S1628Dの作業が終わったところで、物流センターへお客さんが直接修理品を二台持ち込まれてきました。通常はお預かりのみで作業は後日させていただくのですが、長期連休後の着手だとかなり時間がかかりそうですし、作業風景をご覧になりたい感じでしたので、受入検査に立ち会っていただくこととしました。

まずは一台め。トライオード VP-300BDです。C to C市場で購入されたものということで来歴は不明ですが、第二世代のキット組立品です。
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冒頭のお話の通り、本来はメーカー純正修理が望まれるところですが、メーカーサポート対象外ということもあり、少々おこがましいですが過去何度か診させていただいた経験もあったので拝見させていただくことにしました。
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シャーシ内部。持ち込まれたユーザーさんは本機が固定バイアスということをご存じなく、無造作に真空管の位置関係を替えられた結果、バイアスは大きくずれ、ハムバランスも取れていない状態でした。

そもそものご相談はRchからのノイズということで初段12AT7かドライブ段6SN7辺りの劣化を疑ったのですが、結果的には入力ボリュームのガリがかなり進行した状態でした。通常アルコール洗浄で何とかなるものですが、かなり摺動面が荒れているらしく、アルコールでは効果がなかったので一般では販売していない強浸透性のケミカルを摺動面にごく少量塗布し数十回丁寧にシャフトを回して摺動面全体に浸潤させた結果、相当ガリガリいっていたボリュームがほぼ無音まで改善しました。これで駄目ならボリューム交換と予防保全策として直流カット用のコンデンサーを入れるのですが、実用上これで大丈夫そうです。

その後バイアス調整を丹念に行い、ハムバランスをとって完了。電圧チェックもOKでしたので一旦これで様子をみていただくこととしました。

二台めは
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SV-P1616D / 多極管仕様(組立代行品)。もともとEL34仕様で使っておられたものをKT170(松セット)に変更された個体の健康診断です。
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まだ納品して半年強の新同品。KT170仕様でざっと測定してみると出力20V(50W), 周波数特性10Hz以下~100kHz以上(-1dB), ゲイン26dBと健康診断の結果も満点でした。

今日この2台を持ち込まれたお客さんの前で実演的に受入検査状況と簡易メンテプロセスをご覧いただいて、何か感じるものがあったようです。案外こういう風景を目の当たりにすることは少ないかもしれませんね。トータル2時間強ですべての作業が完了しました。

今日の最後は、先日お預かりしたVP-mini88。受入検査の結果、電解コンデンサーの劣化程度かと思っていたのですが、詳細に確認していくとバイアス調整用のポテンショメータの劣化による接点不良が直接的原因で、その他ソケットのコンタクトの緩慢化、KT88ピンのハンダクラック等が検出されて結果的にはかなり工数がかかりました。
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やはり20年経つと意外なところに問題が潜在しているものです。アンプのメインテナンス作業はまず現象面から疑わしい部分を推定し、そこから順に当たっていく作業の繰り返しになります。お医者さんが患者さんに問診してどこが悪いか推定していく作業に似ていますが、やはりどれだけの数の案件をこなしてきたか、という経験がいちばんモノを言う仕事であるいことは間違いありません。

私はまだまだ道半ばでありますが、これからも日々アンプと対峙しながら自分の経験とスキルを上げていけたらと思っています。
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夕方からメンテ後のエージングを兼ねて、そこそこの音量でBGM代わりに聴きながら修理報告書を書いています。

聴いているのは…
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La Falo / ブライアン・ブロンバーグ

ブロンバーグはベースソロというイメージですがこの”ファラロ”はタイトル通りスコットラファロの有名曲をコンボ(ピアノトリオ)で演奏したお奨め盤。もちろんアナログもあります。ローエンドの沈み込みから超高域のトランジェントまで一枚で確認できるので重宝しています。

スタッフが”なんだか贅沢な感じですね”と言っていましたが、日ごろサイン波や矩形波ばかりで音を診断しているので、音楽を聴きながらアンプのエージングをするのは、一つ仕事をやり終えた感があって嬉しいもの。明日はGW中に予定している真空管選別の段取り等がありますので、今日段階で休み前の全てのメンテ作業が終えられてホッとしているところです。

by audiokaleidoscope | 2024-04-25 23:59 | オーディオ

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