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デジタルアンプにサブソニックフィルターを

先週末のこと。お客さんから”CDでは問題はないが、レコードで低域がドン!と入ると大きな異音が出るんだが...”という相談が入りました。お客さんのカルテから分かることは、プリは真空管(SV-300LB / Western Electric 300B仕様)でスピーカーはデジタルアンプ内蔵のパワードスピーカーということだけです。
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お客さん宅で活躍中のSV-300LB / Western Electric 300Bバージョン

最近はスタジオモニター系のブックシェルフ等でもアンプ内蔵タイプが増えていますが、内蔵アンプは多くががクラスD(デジタルアンプ)です。小型, 省電力で大出力を取り出しやすいことから、今後さらに普及していくものと思います。

週末色々と思いを巡らせて、自分なりにトラブルの原因が何であるか、何となく想像がついておりました。ポイントはCD(デジタル)ではOK, レコード(アナログ)でNGというところです。

デジタルでもアナログでも私たちは良い音で音楽を楽しめる訳ですが、その根本的な違いなんでしょう?そのヒントは80年代(以前)のプリメインアンプを思い出していただくと良いかもしれません。皆さんは「サブソニックフィルター」という言葉や機能を覚えていらっしゃるでしょうか…。

そもそも「フィルター」の定義は”不要なものを取り除くこと”で、オーディオにおけるサブソニックフィルターとは①レコードの反り, ②アームの共振, ③モーターのゴロ等によって可聴帯域(概ね20Hz以下)の超低域信号を取り除くものです。昔からオーディオをやっている方でアナログレコードを聴こうとしていたら無音なのにウーハーが妙に前後にフカフカ動いているのを見たことがあるのではないでしょうか。それを取り除くのがサブソニックフィルターである訳です。

ちょっとこの画像をご覧ください。
デジタルアンプにサブソニックフィルターを_b0350085_21201846.jpg
この波形は2017年のブログでアップした画像の再掲になります。カートリッジがアナロレコードのリードイン(演奏開始前の溝)をトレースしている際の周波数分布です。可聴帯域以上に超低域のエネルギーが支配的であるのにお気づきなるでしょう。「地を這う低音」なんて言いますが、この聴こえない音のエネルギーは私たちの想像以上に大きなものなのです。

私の仮説はお客さんのスピーカーがこのサブソニックを除去するハイパス(ローカット)フィルターを装備していない、あるいは意図的にオフしているのいずれかです。アナログアンプでは波形が丸まったり、頭がつぶれたりして濁った音になる程度ですが、デジタルアンプの場合はピークを超えた信号が単にノイズにしかならず、「バチ!」とか「ビリ!」と不快な雑音としてしか認知されません。

そこで今朝、お客さんのところへ伺うにあたって手ぶらでは何の意味もないので、実験をしようと思いGEQ(グラフィックEQ)を持っていくことにしました。20Hzあたりを切ってみて違いが出るかどうかの検証用です。
デジタルアンプにサブソニックフィルターを_b0350085_19322805.jpg
果たしてお客さんを悩ませていた不快なノイズは雲散霧消しました。プリ / パワーともに真空管アンプの場合は何ら問題なかっのに、パワーがデジタルになっただけで起こる問題です。言い換えればSV-300LBのレンジが広すぎてスピーカー内蔵のデジタルアンプの想定を超えたことも一因かもしれません。

メーカーに確認したところ、従来モデルでは10Hz以下を急峻に切っていたが、このスピーカーでは何もしていないとのこと。これが意図的なものかは分かりませんが、出来れば然るべき対策が望ましい事例であると考えます。真空管アンプでなくても20Hz以下がリニアに通るプリは幾らでもありますし、元々デジタルアンプは超高域のノイズをローパスフィルターで切っている訳ですから、ハイパスフィルターを加えることは、それほど大きな問題ではない筈です。

これだけ真空管アンプが一般化し、デジタルアンプが普及したいま、ノーイクスキューズで誰にでも安心して両者が接続できるような規格(ルール)が必要かもしれません。今回は解決の糸口が見つけられましたが、他でお客さんが途方に暮れる...なんてことが起こる前にやっておくべきことがあるような気がします。



by audiokaleidoscope | 2024-04-08 23:59 | オーディオ

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