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聴感は測定を超える ~ 定量評価と官能評価~

オーディオの製品評価には「定量評価」と「官能評価」という二つの手法があります。定量評価は測定によって音のあり様を数値で固定化する行為、官能(定性)評価は耳で聴き、心で判断する行為を言います。

私たちの仕事に測定という行為は欠かせませんが、それ以上に聴感を重視するのは当然のこと。モノづくりの過程においても聴感を重視した結果さまざまな選択がなされます。

例えば今日の作業のなかでも…
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これは今日ラインオフしたSV-S1616D / PSVANE WE300B仕様。途中までお客さんが制作された個体を私どもがバトンを受け取ってワイヤリングとパーツ実装を行ったものですが、ご存じArizona Cap.で音を作り込んでいます。

これなどは「官能」の最たるもので、測定上で違いは全く出ませんが音の違いは明白。”滑らか”, ”芳醇”, ”リアル”といった数値化できない項目において別次元の効果があることは使った皆さんが体験されてきたことです。
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そしてこれはSV-Pre1616D。この個体も上のSV-S1616D同様、ASC X335で音の出口を固めていることに加え、写真では分かりにくいですが、ボリュームをALPS 27型 / 100kΩ(A)に替えて欲しいというリクエストに応えたもの。シャーシ加工が必要なので大変ですが、試す価値は十分あります。

これも効果が測定結果には現れることはありませんし、ギャングエラーも標準品と変わりませんが、音の入り口の純度を高めてより高音質化しようという取り組みの一つです。

オーディオにおける測定は、私たちで言えば健康診断のようなもので欠かせない行為ですが、レントゲン写真や心電図からその人の魅力や個性を推し量ることは出来ないのと同じで、やはり何事も自分の五感を駆使し、自分の感性を信じることが最も重要なのだと思います。
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そういえば最近ちょっと驚いたのがこれ。エレキットTU-8185です。ミニサイズのECL85(6GV8)シングルで、出力はわずか2W+2W。他のパラメータも測定上は特に見るべきところはありませんが、その音はまさに”聴感は特性を超えた”というに相応しいもの。もちろん何十万の高級機と比較して云々...という話ではありませんが、デスクトップのサブアンプとして使うには勿体ない音を聴かせてくれます。

「オーディオの楽器性」という言葉は使い古された言い方ですが、いわゆる「鳴りがよい」とか「音力がある」という感覚的評価がもっと重要視されなければならないと思う今日このごろです。



by audiokaleidoscope | 2024-04-04 23:59 | オーディオ

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