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Marantz7あるある ~真空管プリを活かすために~

今日は真空管機器(プリアンプ)のお話です。
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これは名機Marantz7オーバーホール機台。いわゆる復刻バージョンと言われる世代の個体ですが、数多くオリジナルを触ってきた立場からみても、よく出来ていると思います。
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特定のシリアルナンバーのものは2~3百万円当たり前のオリジナルMarantz7ですが、その世代に使われているヴィンテージコンデンサーの多くが絶縁不良になっていたり、真空管が劣化していたり、接点系が酸化していたり...本来の性能を維持していないものが少なくないのが実態です、
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たいへんなのはMarantz7に関わらずその世代のヴィンテージ機を所有される方の多くがオリジナル指向が強く、安易に現行パーツと交換できないこと。なので修理するにしても当時のストックパーツを調達したり(でもそのパーツも駄目だったり…)、パーツ取り用に別機台を手に入れたりと非常に手間と時間とコストがかかるのです。

なかには購入時”完オリ”という触れ込みだったのにパーツが替わっているものも結構あったりします。

せっかくお預かりしても後からトラブルになる話もあると伺いますので、旧知でお互い信頼し合える方のご依頼のみお預かりしています。

つい脱線してしまいました。今日の本題はここからです。Marantz7など往年の名機と言われるプリアンプを大切に使っておられる方は今でも沢山いらっしゃいますが、いわゆる”使用上の注意”というか知っておくと良いことが幾つかあります。

いちばん多いのは”買ってはみたんだが、どうも音が…”という相談。伺うと半導体パワーアンプと一緒に使っておられるケースだったりします。ここで一つの実測値を示します。
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これはSerial No. 11×××のオリジナル機(OH済)で測定したデータで、他の世代(含む復刻)でも真空管等の個体差で若干差異はありますが、概ね似たような挙動です。

このデータが何を示しているかというと、プリから見た負荷(つまりパワーアンプ)によって低域特性が全然変わってきますので要注意です、というお話です。私どもではプリアンプの測定を行うとき想定負荷を10kΩとしています。実はこの値はプリにとってかなり厳しい条件です。一般的に現行の半導体アンプあるいはデジタルアンプの入力インピーダンスが10kΩ〜20kΩであることを意識し、それら現行アンプでも十分ドライブできないといけないだろう...という考えの元に設定しています。
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これを踏まえて再度Marantz7の表をみて下さい。10kΩ負荷で測定した時の無残な低域特性にお気づきになるでしょう。10Hzで-20dB(1/10)、通常オーディオメーカーが基準としている-3dB(1/2)ポイントが70Hzですから、ほぼ使いものになりません。他方100kΩ(一般的な真空管パワーアンプの入力インピーダンス)では全く問題ない挙動を示すことにもお気づきになるでしょう。

Marantz7の名誉にかけて付言しますと、これはMarantz7に限った話でなく、半導体以前に設計されたプリアンプでは多くの場合、近似した挙動を示します。当時のプリアンプは終段のコンデンサー容量が0.1uF〜0.22uFと小さいために、負荷(=パワーアンプ)の入力インピーダンスが低いと低域方向でドライブ出来ないのです。当時10kΩとか20kΩの入力インピーダンスの真空管パワーアンプはありませんでしたから。

なのでこれはMarantz7が設計的に悪いという話でなく、使う側の知恵として接続するパワーアンプの入力インピーダンスが100kΩ程度(最低でも50kΩ以上)あった方がいいですよ。というお話なのです。昔からタマアンプを使っておられる方には常識のような話ですが、案外知らずに悩んでおられる方もおいでになるかもしれません。

なお真空管プリで出力が2系統(以上)ある場合は更に注意が必要です。例えば入力インピーダンス100kΩの真空管アンプを2台繋げばプリから見た負荷インピーダンスは50kΩに下がりますし、もっと厄介なのは例えば1系統に100kΩの真空管アンプ, もう1系統に10kΩの半導体アンプを接続した場合を想定すると負荷側の合成インピーダンスは約9kΩにまで下がる計算になります。とてもじゃないですが、これではいくら名機でも真空管プリの良さは出ません。

昔から「ハイ受け, ロー出し」の重要性を訴えてきました。つまりなるべく低いインピーダンスでプリから信号を送り出し、パワーアンプはなるべく高いインピーダンスで信号を受け取る。その差分が大きいほど信号ロスが減り純度の高い信号伝送が可能という意味の一端を二つの表は示しているのです。

気をつけたいのは半導体アンプの全てが悪であるということでは決してありません。例えばオールドレビンソンなどでハイインピーダンス受けの機器もあります。要は活かすも殺すも使い方次第ということですね。


by audiokaleidoscope | 2024-04-03 23:59 | オーディオ

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