「不便益」(benefit of inconvenience)
2023年 11月 06日
時間的制約もあって写真をゆっくり撮らせて頂く余裕もありませんでしたが、納品後10数年ぶりの装置の健康診断やマルチアンプのバランスの取り直し、またスピーカーセッティング(間隔, 内ぶり角度等)のサポート, その他、測定器によるアンプの左右チャンネル利得(ゲイン)の一致確認、ハムバランスの調整など様々なお手伝いが出来てよかったです。

そしてシステムのアナログ化への着手ということになりSV-310EQが加わり、Pro-Jectのターンテーブルで装置的にはほぼ完成ということになった訳ですが、装置が揃って終わりでないところがオーディオの奥深く面白いところ。従来PCオーディオメインだったNさんにとってアナログ導入により音の景色がまったく違ったものになって最初は戸惑いがあったかもしれません。電気的な調整は今回完全に出来たので、あとは自分と装置の感覚的距離感を詰めていく作業が続くことになるのだと思います。Nさんのシステムが今後どのように成熟していくか静かに見守られて頂こうと思っています。
「不便益」(benefit of inconvenience)ということばがあります。いまは物事がどんどんシンプルで合理的になり、昨今は人は判断の一部ですらAIに任せようとする時代になりつつあります。オーディオも例外でなくスマホとパワードスピーカーが無線(Bluetooth)で繋がることで音楽を楽しめる実に”便利”な時代になりました。
Nさん宅には調整を見守る三人のお仲間が立ち会われました。その中のお一人、Fさんが不意に「私の家の音も聴いてくれないか」と仰いましたので、ぜひ!と申し上げてお伺いさせて頂きました。きっとNさんの音から何かを感じられたのでしょう。オーディオは単に音を出すだけの道具ではない不思議な何かをもっているのです。たいへん(不便)だからこそ得られる感動(益)も大きいこともオーディオの魅力の一つといっていいかもしれません。