カートリッジ銘器探訪 ”オーディオテクニカ” 松竹梅一本勝負
2023年 09月 14日

現在もカートリッジはほぼ国内製造という徹底した品質管理と素晴らしいサービスマインド(番組内で素敵なエピソードを紹介させていただいています)で多くのファンを獲得しているテクニカさんの代表的カートリッジ3グレード4機種を平田さんご自身に選んでいただきました。

このVM540MLはこの価格帯では稀ともいえるマイクロリニア針を採用しており、音溝に対する追従性の高さと所謂MM的な既成概念を遥かに超える豊かな情報量が魅力です。


XIは特殊ラインコンタクト針で高域の伸びを加えた音作りになっていて音場型のXAとは対照的です。敢えて言うとクラシック系の方はXA, ジャズ/ロック系の方はXIがお奨めということになるでしょうか。

製品イメージとしてはART9XAとXIの美味しいところを一つに凝縮させた感覚とでも申しましょうか。構造的には鉄芯型ですが、サウンドチューニングはXAのエッセンスを投入したモデルで、ハウジングはチタン、アンダーカバーは制振性の素材を投入し共振を抑える方向性のチューニングをしているところが前回のアナログリラックスと逆の発想で極めて興味深いところです。
今回の試聴リファレンス盤は必ずしも盤質が良くはなかったのですが、スタイラスが特殊ラインコンタクトでまさに吸い付くようなトレーサビリティを発揮し、サーフェスノイズも極少という試聴結果に終わりました。さすが世界最大のカートリッジメーカーの威信をかけた高級モデルだけのことはあります。
前回同様このクラスになると特性を超えた部分での官能性, 音楽性の高さという部分での評価にならざるを得ないアナログ再生の奥深さを感じたひと時であった訳ですが、いままでオーディオテクニカ=廉価帯に良品の多い質実剛健なメーカー、というイメージだったのが今回の竹(ART9)や松(ART20)を聴かせて頂いて自分のなかのテクニカさんのイメージがすっかり変わりました。
テクニカさんのコーポレートステートメントでる”Always Listening”は音楽を聴くというだけでなく、常に顧客の声に耳を傾けるというダブルミーニングであると番組の最後にお話しして下さった平田さん。ユーザーの信頼に応えるということの重要性を理解しているからこその品質と音質そして価格の三位一体を極めて高いレベルで融合させている素晴らしいメーカーであることを音と共に確認する一時間です。ぜひお聴きください。