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ブライアン・ブロンバーグの45回転二枚組LP「HANDS」

4/7(金)オンエアの「真空管アンプ一本勝負」では今月下旬発売予定のLP(Brian Bromberg「HANDS」:45回転二枚組)をとりあげています。

ジャズファンの皆さんならキングの”低音”シリーズで名を馳せたブロンバーグの「WOOD」はご存じのはず。私の番組でも何度も掛けましたし、オーディオイベントでラッカー盤をプレイして大反響となったこともありました。ブロンバーグ盤は他にも多数リリースされており、ストリーミングでもディスクメディアでもアクセス可能な訳ですが、実はもう一枚、知られざる超ド級盤があるのはご存じでしょうか?それが今回アナログでリリースされる「HANDS」です。

ジャズ系低音マニアにはWOOD以上にズシーンと響くこのタイトルは現在CDは在庫僅少。ストリーミングでも見ることはありませんが、以前収録時にキングインターの平野さんにお会いした際に「HANDSをLPで復活させてオーディオファンに再び聴いて頂きたい」とプレゼンしていたのです。

それがめでたく、アナログ発売決定!しかもカッティングはあの北村勝敏さん(ワーナーマスタリング / MIXER'S LAB)。番組ではHANDSをラッカー盤で聴いて頂けます!
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キングインター平野さん(前列左), ワーナーマスタリング / MIXER'S LAB北村さん(前列右)
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ラッカー盤
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収録機材(EQ1616D/松, Pre1616D/松, P1616D/Western Electric 300B仕様)

そしてもう一点お伝えしたいのが、HANDSのライナーノートでオーディオ解説を書かせて頂いていること。キングインターさんの転載許可をいただきましたので是非ご一読ください。

事の発端は半年ほど前、2022年夏に遡る。

ミュージックバード(TOKYO FM系 有料音楽配信チャンネル)の私の番組「真空管アンプ一本勝負」に準レギュラー的頻度でキングインターナショナルの平野聡氏にゲスト出演いただいている。近年キングインターが手掛けるジャズ作品(とりわけLP)は音良し、演奏よしといえるものばかりで、ジャズファンなかんずくオーディオファンにとって大好物なものばかりだ。一因として平野氏がジャズに通暁しているだけでなく、オーディオファンであることも大きく影響していることは間違いない。良いジャズと良いオーディオは車の両輪なのだ。

話を元に戻そう。2022年夏、平野氏ゲスト回の収録が終わり雑談をしている中で、私は或る提案をした。
ブライアン・ブロンバーグの「HANDS」というCDがある…ブライアンが上の句ならばオーディオファンにとって下の句は「WOOD」(2001年)というくらい知られたタイトルだが、ジャズ系低音マニアには「WOOD」以上にズシーンと響く「HANDS」をLPで再発してほしい、と。「HANDS」のCDは在庫僅少でストリーミングでも見ることがない。平野氏には「45rpm二枚組で、カッティングは北村勝敏氏(ワーナーミュージックマスタリング / ミキサーズ・ラボ)で再発を!」とラブコールを送らせていただいた。

そして2022年暮れ、平野氏から”「HANDS」のLP企画が決まり、カッティングも北村氏に依頼することとなった”という連絡が入って私は快哉を叫んだ。そして急遽カッティングが終わった1月末に私の番組で平野氏, 北村氏をゲストにお招きしラッカー盤の音を聴かせていただく機会を得た。

「WOOD」がRandy Waldman, David Brombergとのコンボであるのに対し「HANDS」は完全ソロ。よりウッドベースにフォーカスしたサウンドになっている訳だが、収録時に聴いた「HANDS」の45rpmLPサウンドは”衝撃”という言葉すら陳腐に聴こえるほどのインパクトがあった。幸運にもこのLPを入手された同好諸兄には、ぜひCDの音も併せて聴いて比較していただきたいと切に願う。このLPには、これまで何度となく議論され、時に論争ともなった”CDよりLPの音が良いのは何故か?”という問いに対する回答が如実に示されているから。

まず10kHz以上の高音域の違い。ウッドベースのソロで高音云々とは如何なものか…というのは早計である。ブライアンの指が弦をスナップする際の微かなハーモニクスがベースの胴鳴りを一層クリアに際立たせ、音場は拡がり、低域側の伸びにも大きく寄与していることが一聴して分かる。いままでCDしか聴いてこなかった私には、これが同じマスターから切られた音源とは俄かに信じがたく、カッティングを担当した北村氏に確認したところ、EQ等の処理は一切せず、ProToolsからSSLのアナログミキサーを経由してダイレクトにNEUMANNのカッティングマシンに送っているとのことで更に感動は大きなものとなった。

収録が進み番組最後に大元のマスター音源(96k/24bit PCM)を聴いてみようということになった。そしてすべてが明らかになった。このマスター音源にはLPにはあってCDにはない”失われた高域”が確かにある…CDがもつ物理的限界、つまりアナログ変換した際に22.05kHz以上を棄ててしまうことによって起こる差異を「HANDS」LPは明示しているのだ。20kHz以上なんて聴こえない…それは鼓膜の感度に関することであって、「HANDS」によって私たちは全身で音楽を感じていることを改めて認識することになる。45prmが33rpmに対して音が良いかという問いは愚問かもしれない。単位時間当たりのトレース長が長い=情報量が多い事は勿論、溝の幅を広くとれることでカッティングレベルを高くとれる=ダイナミックレンジが大きい、そして音質的に不利な最内周部を回避しやすい点も重要である。

最後に本LPではCD未収録曲が追加収録されていることを特筆しておきたい。嘗てジャズ低音マニアがこぞって愛聴したオスカー・ピーターソン「We Get Requests」のB面一曲目”You Look Good to Me”冒頭のウッドベースのアルコ(弓弾き)がオーディオチェックに好んで使われたことを懐かしく思い出す同好諸兄にとって「HANDS」は新たなジャズ・オーディオのリファレンス盤になるに違いない。帯にあるとおり、床の振動とご近所からのクレームには十分お気をつけいただき、できるだけ大音量でお楽しみいただきたい。

(2023年1月 SUNVALLEY audio 大橋慎)


by audiokaleidoscope | 2023-04-06 00:33 | オーディオ

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