昨日の
概要編につづきTU-8550の試聴レポートです。

まずは純正組合せといえるTU-8900と組み合わせて聴いてみました。300BはWestern Electric 300B(1988)です。

まずはTU-8900単独でしばらく聴いたあと、TU-8550を加えてみると明らかに微小レベルの情報(ニュアンス)が加わり空気感表現が向上します。力強さや密度感を加える傾向でなく、広大な音場が眼前に広がりスピーカーの少し後方に楽器が定位する感覚。オーディオ的には確実にランクアップした音を楽しめます。
細かく聴き込んでいくと10kHz~12kHz付近のシビランス(簡単にいうとサシスセソ)が強めの個性をもっていることが分かります。恐らくこれは標準のカップリングコンデンサーの個性が支配的と思われますので実機が入荷したらArizonaで再試聴したいところです。
つぎに真空管を替えてみます。用意したのはJJとPSVANEの二種類(ECC83×4 + ECC82×2)です。JJはエレキット標準球ですが、デモ機のエレハモよりも低域の量感が増す傾向でTU-8550のキャラクターにはベターな選択と感じました。PSVANEは全帯域で円やかさが増しミッドバス帯域の倍音感が増した結果、エレハモで感じた僅かな尖鋭感が減少し柔らかく聴き易い印象です。
昨日のレビューで四連ヴォリューム採用によるSN確保がTU-8550の大きな特徴であることを書きました。実はこの方式には一つだけボトルネックがあり、音量(ヴォリューム摺動位置)によって音量だけでなく音色も変わってしまう場合があるのですが、TU-8550ではフラットアンプのゲインが約17dB(7倍)と高過ぎないことが奏功しデメリットは感じません。
続いてフォノEQ部の音を聴いてみましょう。昨日書いたとおり高級機に搭載されるCRイコライザーを採用しているTU-8550。フラットアンプ(ライン入力)がワイド&クリーン、クリア&シャープ系の表現であるのに対して、フォノ入力は中域にエネルギー感があり厚みを感じる音です。通常のMMイコライザーよりも数dBゲインが低めですので、出力電圧の高めのカートリッジの方がライン入力との音量差が少なく使いやすいでしょう。真空管による音の変化もフラットアンプより遥かに大きいので、アナログメインの方は良いタマを使って下さい。
最後に他の形式パワーアンプでも試聴してみました。三極管シングルと対照的な多極管プッシュプルの代表格としてSV-8800SE/KT170で聴いてみます。

SV-8800SEとの組合せではTU-8550の別の一面を感じることが出来ました。ヴォリューム位置10時辺りから急激にエネルギー感が増し三段目のロケットに点火したような力強さです。ハイゲインのパワーアンプと一緒に使うことで良い意味で四連ヴォリューム(ゲイン可変)プリの個性が出た印象です。

総括するとTU-8550はこの価格帯では出色のパフォーマンスを秘めた本格的プリアンプといえます。更なるグレードアップポイントは
・フラットアンプ部の
カップリングコンデンサー(0.47uF × 4)・真空管(とくにフォノEQ部)
を挙げておきたいと思います。その他気づいたこととして基板アンプに共通の傾向として電源ケーブルによって聴感上のSNの変化が大きいので、出来れば良質な電源ケーブルの使用をお奨めしたいと思います。
私どもでは真空管なし, メーカー標準(JJ) , SVバージョン(PSVANE + Arizona)のセットを用意させていただき、9/12(月)から受注を開始予定です。ぜひエレキットのリファレンスプリにご期待ください。