すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、近日エレキットから新製品TU-8550(フォノEQつきプリアンプ)が発売されます。
私がTU-8550について最初に情報を得たのは数か月前のことだったと記憶しています。エレキットからフォノEQ付きの本格的なプリアンプキットが出る…デモ機が出来たら一週間でいいから聴かせて!とずっと前からお願いしていたところ、ついに今日実機と対面することが出来ました。今日はまず概要編(スペック + 実測データ)を紹介したいと思います。

位置づけとしては既出の
TU-8900(300B/2A3コンパチシングル)の姉妹機的な存在で、サイズ的にも大き過ぎず小さすぎず、TU-8900とピッタリ重ねられます。

エレキットでは既に大ヒットモデル
TU-8200SV(KT88シングル)+
TU-8500(プリアンプ)というコンビがありますが、このTU-8550はより本格的な上位モデルという位置づけ。早速細部をみていきましょう。

内部です。エレキット伝統の一枚基板仕様で、真空管は横向きにレイアウトされノイズシールド用のキャップが被せられています。

リア側からみた写真です。非常に面白いと思ったのはリアの入出力RCAターミナルは基板直付けタイプを採用し、メイン基板に垂直に基板を立ててリアパネルと兼用しているところ。パッと見まったく分かりませんが見事な機構設計です。

上の写真をクリックすると画像が拡大されますのでご覧いただきたいのが従来のエレキットプリにはなかった(と思う)プリアウト2系統を装備しているところ。加えてREC OUT(録音出力)を装備しているところも上位機ならではというところでしょう。

真空管はフォノ段, フラットアンプともに12AX7 × 2, 12AU7 × 1(あわせて6本)です。真空管ソケットも基板タイプを採用し、メイン基板に垂直に立ててソケットを横向きにしています。ちなみにフォノEQ部はCR型でMMタイプ。MCを使う場合は外づけのトランスかヘッドアンプを用意します。
注目したいのは写真中央の黒いカップリングコンデンサー(0.47uF × 4)の周辺に確保されたスペース。よく見ると白い四角で枠取りされているのが見えると思いますが、これはArizonaなど大型カップリングに替えた際に無理なくレイアウトするための工夫です。

今回お借りしたサンプルではすべてエレハモ(ロシア)球でしたが、メーカーに確認したところ製品版では当面JJを採用する予定とのことでした(真空管なしのTU-8550Nも併売)。回路図がないので詳細は不明ですが、かなりローノイズ化に配慮していることが分かる設計でLow DropoutレギュレータによるDC点火が採用されています。通常真空管のレイアウトは回路図通りX-X-Uの並びにしがちですが、本機ではX-U-Xとし、カソフォロ段(12AU7)へのシグナルパスを最短化しようという意図が見てとれます。
TU-8550の最大の売りの一つと思われるのが上のALPS製四連ボリューム。通常の二連ボリュームと異なりボリュームを摺動によってフラットアンプのゲインも増減させ小音量時のSN確保に有効な手段です。写真右のセレクターもALPS製を採用し信頼性を向上させています。
今回のサンプルは正確には量産試作とのことですが、真空管こそ異なるものの基板は製品版と同じとのことでしたので、ざっと測定してみました。負荷インピーダンス=10kΩでの値です。
残留ノイズ: LINE 0.1mV, PHONO 0.3mV
ゲイン: LINE 16.9dB, PHONO(MM) 29.5dB, PHONO+LINE 46.4dB
周波数特性 LINE 10Hz以下~330kHz, PHONO 11Hz~100kHz以上
ボリュームギャングエラー 0.4dB@9時
消費電流 0.24A (20W)
という立派な結果です。真空管パワーアンプに接続する場合は通常負荷インピーダンスは50kΩ以上ですから周波数特性は更に向上します。10kΩ負荷でこのスペックが出るということは、TU-8550は半導体パワー, クラスD(デジタルアンプ)にも十分使えるポテンシャルを秘めているといえましょう。
いよいよ明日は②試聴編をお届けします。さてどんな結果が出るか楽しみですね!