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廉価帯中国真空管のイメージを覆すNew PSVANEシリーズ

さまざまなモノの価格が少しづつ上がってきている昨今ですが、「価格」と「価値」の相関について改めて考えさせらることが多くなってきました。高い100円もあればお値打ちな10,000円もある訳で、いま私たち買う側にその「見極め力」が問われているのかもしれません。

私どもの業界では、3月から始まったウクライナショックを契機として真空管市場が大きく混乱、世界最大の真空管製造国の一つであったロシアからの真空管の入荷がストップし上を下への大騒ぎになりました。そして更に追い打ちをかけたのが円安でした。

しかし手をこまねいてばかりでは何も始まりません。代わりの真空管を入手すべくあらゆるルートからの調達を試みていたなかで、偶々中国の恒陽(PSVANE)が廉価帯の真空管がマイナーチェンジ中であるという情報を入手。そして6月に主だった管種が入荷したので測定と試聴を行ったところ好印象だったので即公開試聴を行うべく収録を行いました。そのオンエアが9/2(金)です(翌週リピート)。
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元々PAVANE(パヴァーヌ)というブランド名のつもりがタイプミスしたまま商標登録してしまったという都市伝説が駆け巡ったのち、PSVANE WE300Bのデビューによって一気に市民権を得たと言っても良いPSVANEブランド。従来の中国球のイメージを打破する高価な300Bでありましたが、品質はもちろん音質的にも高い評価を得ました。そして後続したPSVANE WE274Bは或る意味300B以上の評価を得たと言っても過言ではありません。いまでも現行274Bでこれを上回るものはありません。

あれから10年ちかい年月を経た訳ですが、今回の試聴を通じてPSVANE WEシリーズで培ったノウハウが廉価帯にもしっかり波及してきていることを確信しました。

今回の収録では…
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①SV-S1616D/EL34仕様 (PSVANE ECC82×3 + EL34ペア + 5AR4)
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②SV-S1616D/6L6GC仕様 (PSVANE ECC82×3 +6L6GCペア + 5AR4)
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③SV-Pre1616D(PSVANE ECC83×3 + 5AR4) +SV-S1616D/KT88仕様 (PSVANE ECC82×3 + KT88ペア + 5AR4)
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④SV-Pre1616D(PSVANE ECC83×3 + 5AR4) + SV-S1616D/6L6GC仕様 (PSVANE ECC82×3 +6L6GCペア + 5AR4)
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⑤SV-Pre1616D(PSVANE ECC83×3+5U4G) + SV-S1616D/6L6GC仕様 (PSVANE ECC82×3 +6L6GCペア + 5AR4)

を試聴いただきますが、今回もっとも感銘を受けたのが整流管のクオリティ向上でした。過去にも番組や拙著で申し上げたことですが現行球のクオリティは90年代とは比較できないほど向上しています。ただ整流管に関しては全盛期(~1970年代)の品質, 音質を再現できているとは言える状態ではありませんでした。

少し詳しく書きますと電気的にはダイオードと比較して整流管の方が出力電圧が低い、つまり内部抵抗が高いという側面があります。これは技術的には整流管の方がレギュレーション(電源効率)が悪いことを示しており単純に性能面から言えば整流管の方が劣っているという見方もある一方、整流管でなければ出ない音があるのも厳然たる事実です。たとえば1940年代のWestern Electric 274Bが数千ドルで流通するのも単なる希少性だけでなく、当時のWesternでなければ出ない音がある...そう感じる好事家の皆さんがいらっしゃる証左です。

話を現行整流管に戻すと、全盛期のそれに対して内部抵抗が低い(=出力電圧が高い)ことを原因としたトラブル(の可能性)についても以前から言われ続けてきました。電源ON後の突入電流に耐えきれず管内スパークが生じてFUSEがブローしたり整流管が壊れるリスクがあるという現象です。現行の整流管で全盛期の品物に匹敵する内部抵抗を有しているのはPSVANE WE274Bだけといっても過言ではありませんでした。

今回番組で取り上げさせていただくに当たり、電気的測定を含めさまざまな確認を行ってから収録に臨み、電圧増幅管(ECC81~83)のノイズフロアの低さと双極Ipのバラツキの小ささにも感心した訳ですが、最も印象的だったのがPSVANE 5U4Gでした。廉価帯直熱整流管もついにここまで来たか!というのが偽らざる印象です。

以下、具体例を示します。SV-Pre1616Dにおける整流後出力電圧の実測値です。

ダイオードモジュール 286V
RCA 5R4GY 272V
Western Electric 274B刻印 271V

この値からヴィンテージ274B, 5R4GYで15V前後の管内電圧降下が発生していることが分かります。では現行整流管ではどうでしょうか?

Golden Dragon 274B 277V
PSVANE WE274B 271V

となっています。さきほど書きました「全盛期の品物に匹敵する内部抵抗を有しているのはPSVANE WE274Bだけ」というエビデンスです。そして今回収録前測定で最も驚いたのがPSVANE 5U4Gでした。

PSVANE 5U4G 271V

つまり新しいPSVANE 5U4Gは従来注目されることの少なかった内部抵抗も含めてヴィンテージ整流管に迫るクオリティになってきたと申して差支えないでしょう。音質的にも円やかで刺激感のない艶やかさが大きな魅力で、真空管アンプユーザーにとっては更に選択肢が広がったといえます。

当社製品のおける整流管の使用可否について再掲しますので参考にしてください。
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by audiokaleidoscope | 2022-09-01 23:59 | オーディオ

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