わたしの重要ミッションの一つが組立代行品や修理完了品の出荷前点検であることは何度か書きました。最近は特に測定後のエージングに十分な時間を掛けるようにしています。
このSV-EQ1616D(松)も昨晩から連続エージング中。組立代行品は50時間(以上)の通電を行ってから出荷しています。適切なエージングによりノイズフロアが下がり特性も安定するので重要なプロセスです。
これがSV-EQ1616Dの内部ですが、今日書くのは組立状況の確認方法です。当社の組立職人は高い技術を有した熟練の方ばかりですが、特性が当社基準に合致しているだけでなく製造状況も隅々まで確認して成績証明書のハンコを押して初めて出荷OKとなります。
今日はキットを製作される方にも是非真似していただきたい検査手法の一つをご紹介します。
以前にも①
ネジロック剤の活用, ②
接点のアルコール洗浄等について書いたことがありますが、これらは言わば仕上げ工程の作業。今日のテーマは更に基本的, 根源的な内容であり、非常に有効なチェック方法といえます。
上の二枚の写真は何をやっているかと言いますと「
竹ピンセット」でシャーシ内の全ハンダ箇所を引っ張ったり揺すったりしてイモハンダが潜んでいないか確認しているのです。つながっているスピーカーからバリとかガサという異音が出ないか確認するだけの誰にでも出来る作業ですが非常に有効な工程です。
この作業が最も効果を発揮するのが修理品の入庫チェックです。私どもに入荷する修理依頼は全販売台数の3~5%程度ですが、そのうち70%程度が単純なハンダ不良。言い換えれば誤配線やパーツ間違いというのは殆んどありません。大多数が単純なハンダづけの問題(量が足りない、浸みこんでいない)です。そのイモハンダ箇所を検出するために竹ピンセットが不可欠という訳です。特にラグ板へのリード線が複数行っている場所が要チェックです。ハンダ部分は常に熱膨張, 冷間収縮の反復という大きなストレスに晒されています。組立直後はOKでも5年後, 10年後にハンダクラックで導通不良になる事例も稀ではありません。
当然ですがピンセットは絶縁体でなければなりません。且つ防静電, 防磁であることも必須で金属にちかい撓り(しなり)特性を有している必要があることから竹素材はおすすめです。ネットを検索すると多数ヒットするでしょう。ポイントは先端が尖っていて一定の厚みがあること。金箔貼り用のピンセットでは剛性が足りないので注意しましょう。
以前こんなこともありました。プリアンプを組んだが、どうしてもノイズが取れない。真空管ソケット以外のパーツは全て交換したが、それでも改善しない…というご相談でした。結果的にはラグ板に配線されていたアースラインが一ケ所イモハンダになっていただけ…竹ピンセットのお陰で僅か5分で問題箇所が特定できました。
キットを組まれる皆さんはぜひ”竹ピンセットチェック”を行って下さい。自分の作品の一層の愛着と信頼をもってお使いいただけることが出来るでしょう。感電に十分を気をつけて行って頂ければ幸いです。