今日は再掲的な内容になりますが、毎年寒さがピークを越える今頃から増えるご相談について少し書きます。その前にこちらを読んでいない方は少し目を通して頂ければ幸いです。
最近「ボリュームのガリが出るようになった」とか「左右のゲイン(音量)の差がある」といった不具合はありませんか?あるいは「何となく音が曇っているような気がする」といったことはないでしょうか?
もちろん真空管の消耗等による電気的要因も排除できませんが、寒冷な地域で積雪による室内の湿度が高い地域やファンヒーターをご使用で、お住いの湿度変化が激しい環境にお住まいの方は接点(入出力ターミナル, 真空管ソケット, ボリューム/セレクター等)が結露/乾燥の繰り返しで酸化被膜が生成している可能性がありますので、このタイミングで接点クリーニングをお奨めします。
この一週間でも数件同じような内容でアンプのメインテナンス依頼品が入庫しました。検査の結果いずれもボリューム内でのグリスの凝固, 接点の汚れ(酸化被膜), ソケットの接触不良が原因であり、アルコール洗浄で原状を回復しています。
またしばらくアンプを使っていなかったという場合にも全く同様の問題がしばしば発生します。今日は対処の実例をご紹介します。

LM91A(JAN CW337Aスモールパンチ/WE337Aメッシュ/WE300B/WE274B刻印)。新古品といっても良い状態です。通電するとゲイン,最大出力,周波数特性等は全てOKですが波形を監視していると片chのゲインが安定せず、残留ノイズもフラついています。念のため真空管を左右chで入れ替えても問題は変わりませんので原因はアンプ本体です。

内部を確認しましたが劣化は全く見られませんし、測定上も何ら問題ありません。こういう場合はほぼ間違いなく接点の汚れや酸化被膜が原因です。

まずハムバランサーのアルコール洗浄。前にも書きましたが油分を含んだ潤滑系ケミカルは禁忌です。内部の摺動子めがけてアルコールを少量噴霧し、すばやく軸を左右に回転させます。そしてPCの掃除等でよく使うブロワーでアルコール分を飛ばす作業を2~3回行って下さい。

こんどはソケット端子部の洗浄。同じアルコールを使い歯間ブラシで内部にこびりついている汚れや埃を除去します。実際お預かりしたアンプでソケット洗浄によってノイズが一桁下がるケースも少なくありません。
別の事例では

SV-4(KT66プッシュプル)。こちらも内部は新品同様です。

テレフンケンEF86/GEC KT66/ムラードGZ34組合せ。真空管はすべて新品ですが、RCAケーブルを抜き差したり、アンプに振動を与えるたびにゲインがふらつく現象が発生、この場合は入力RCAプラグの汚れを疑います。

まずは綿棒でRCAのCOLD側を無水アルコールで洗浄。こびりついていた埃で綿棒が黒くなります。

そして91Aと同様に歯間ブラシが大活躍。塗るのではなく磨く感覚で素早く動かします。
結果的にこれで91AもSV-4も完全に復活しました。実はこれらのアンプは暫く使われていなかったもの。久しぶりに電源を入れる前にしっかりお手入れ頂きたいと思います。その他この一週間で故障でなく洗浄で蘇ったアンプたち。

SV-501SE(Western Electric 300B/JENSEN仕様)

JB-320LM

SV-2300LM
以上すべてアンプ本体に異常なく接点不良が原因でした。
乗らない車ほど壊れる、空き家ほど傷む…なんて言いますがアンプも同じ。毎日使ってあげるのが一番長持ちで良い音をキープする秘訣です、というお話でした。