こんな状況で試聴のお客さんも少ないので、今日もせっせと出荷前検査。先日のポストで海外向けの量産納期が11月と書いてご心配をお掛けしましたが、国内向けの都度注文の完成品納期は現在約3ケ月というところ。早く元のペースに戻せるよう皆で頑張っているところです。

SV-91B Western Electric 300B仕様
試験成績(測定データ)も上々。Arizona効果もしっかり感じられる音になっています。

これはSV-P1616D/ELROG 300B仕様。Western Electric 300B仕様とはひとあじ違う端正で奥行きのある音。
出荷前検査をしながらいつも思うのは「どんなスピーカーで鳴らされるのかな?」とか「どんな音楽を聴かれるのかな?」というようなこと。きっとお客さんは私ども以上にわくわくされているに違いありません。まだ見ぬ君を待ち焦がれるような気持ちでいらっしゃることに想いを馳せながら一台一台と向かい合っています。
出荷前検査は新規注文品だけではありません。永くご愛用いただいた機器のメインテナンス上がりの検査も重要な業務のひとつです。完成品と向かい合う時とは異なる感慨が去来するというか、新品にはない風合いから使って下さっているお客さんの体温みたいなものを感じることも少なくありません。時に手紙が同封されていたりして単にモノだけに留まらない心の交歓が繰り返されています。

このエレキットTU-875とトライオードVP-mini88MkIIのセットがメインテナンスで戻ってきたとき、同封されていた手紙の差出人はお客さんの奥さまでした。このアンプを製作された数年後に亡くなられたご主人に代わり10年以上大切に保管され、このたび奥さまが開店されるお店に置きたいということでオーバーホールにお預かりしたものです。
旦那が生涯大切にしてきた自慢の品が自分だけでなく他の人の目にも触れるようする、
それもまた供養のひとつではないかと思って。
そう書かれていた奥さまの気持ちに応えるべく心こめてメインテナンスさせて頂きました。忘れじの君との時間を思い出しながら、奥さまのお手許でこれからも元気に音楽を奏でてくれることでしょう。