今日或る人と喋っていて「忘れじの一冊というか自分のなかで忘れられない本みたいなものがあったら二三冊あげてくれませんか」みたいなお話がありました。きっと他の人はサリンジャーの”ライ麦畑でつかまえて”とかヘミングウェイの”老人と海”みたいな感じなんだろうと思いつつ、迷わず挙げたのがこの二冊。

図解 1・2石ラジオ制作集(泉弘志) 昭和50年
小学校5年生のころ買った本。それまではキットで作っていたラジオを初めて部品レベルで自分で集めて組み立てるきっかけになった一冊で、いまでも宝物です。2SC372とか2SC668を使ったラジオでクリスタルイヤフォンで聴くタイプが主でした。布団に入って作ったラジオで深夜放送を聴きながら寝るのがとても楽しかった思い出があります。

楽しく作る電子時計とカウンタ(西村昭義) 昭和53年
中学生になる頃にはLSI(集積回路)とかデジタル方面に興味が移っていきました。まだマイコンという言葉は一般的でなかったような…。蛇の目基板を使ったりエッチングしてプリント基板を自作したりして、とにかく数字が出るものを作るのが楽しかった頃。

これが実際本に載っていたMM5311(ナショナルセミコンダクタ社)を使った時計そのもの。よくもまあ、こんな小さい基板に組んだものです。この後、高校生になって一瞬マイコンに興味が移ったのですが価格のハードルが高すぎて頓挫。アナログ回路に逆戻りした結果、音の出るオーディオに向かうことになりました。
三つ子の魂百まで、と言います。私は大学では文系を選び外国語と経済を学びましたが、結果いまこんな仕事をしているのも子どもの頃この二冊と出会ったからと言えるかも。今は本からネット(文字から動画)の時代になりましたが、紙媒体のいちばんの強みは”残る”ことかもしれません。頭から一旦消えても読み返せば何度でも記憶と情報が戻ってくるところが素晴らしいです。
音楽もPhysical(CDやLPのように形あるもの)を使って聴く事からダウンロードそしてストリーミングに形が変わってきた訳ですが、近年またLPの存在感が見直されてきているのはご承知の通りです。データと違ってモノは嵩張りますが、その分 物理的なだけでない「重み」があるように感じるのは私だけではない筈。我が家の本棚はこんな昭和な本ばかりですが、ずっと大切にしていきたいと思います。