今日はH邸訪問。半年に一度くらい定期的にお邪魔している感じです。
今日の目的は二つ。ひとつは先日
レリックさんにお願いしたウーハー(JBL 2235H)のエッジ張り替えが完了したので、その状況確認。もう一つはオーディオ周りの電源を200V化されたので、これを機に4ウェイマルチ計8台のパワーアンプの再チェックと帯域バランスの調整をゼロからやり直すことです。
こう書くと簡単そうですが、測定器を持ち込んで全機台のハムバランスチェック, 固定バイアスアンプはバイアスに再調整から始まり、チャンデバを含んだクロスオーバー周波数の見直し,スロープ特性の見直し, レベルの取り直し…経験者でもかなり神経を使う作業ですが、結果的にはシステム全体のSNが上がり、特にウーハー帯域(SV-86B+
SV-284D)の空気感の圧倒的な改善によってシステム全体のダイナミックレンジが上がって満足いく結果が得られました。

ウーハー帯域のSV-86B(2002年~)
電源の200V化のメリットをひとことで言うと大電力を安定的に供給できることに尽きます。電圧が倍になることで電流は半分になりで電圧降下が1/4に下がるので真空管アンプのような電流を消費する機器については大きな恩恵があります。つまり電源への負荷変動を少なくするための選択が200V化という訳です。
さらに言えば日本の商用100Vは片側接地のため厳密に言うと電源極性によりノイズレベルが変化します。これを200V化することによって電源極性がなくなる(簡単にいえばバランス伝送化する)点もオーディオユーザーにとっては大きな恩恵となります。特にHさんのようなマルチ派の方には非常に有効です。
他方200V:100Vのステップダウントランスが必須となることで、トランスの品質によっては肝心の力感が失われたりトランスが唸ったりしますし、200V工事によって接地抵抗が十分に下がらないと逆効果となるリスクもあるので注意が必要です。幸いH邸では適切な工事によって霧が晴れたような空間性が得られたわけですが、その分機器も電源の改善に見合うパフォーマンスを発揮しないといけません、

ツィーター帯域アンプのバイアス調整とハムランスの追い込み実施中

VP-2500SE(2009年~) PX25パラシングル
マルチはとにかくノイズに敏感です。通常はアンプとスピーカーユニットの間にはネットワークが介在し帯域分割を行っている訳ですが、そのネットワークのL分(インダクタンス)によってある程度ノイズが吸収される側面があります。
他方 マルチではパワーアンプの前に置かれたチャンデバが帯域分割を行うことでパワーアンプとスピーカーユニットが直結されます。良い意味で言えばットワークによる音の鈍りを避けられる代わりにノイズ的には極めて無防備な状態であるのがマルチと言える訳です。マルチの難しさ(泥沼性)の根幹はここにあると言ってもいいでしょう。アンプ屋によっては最も実力を問われるプラットフォームです。
H邸ではチャンデバ自体もSV-12D(12AU7/5963 × 6本仕様)で入り口から出口までオール真空管ですからベスト状態をキープするのはかなりの経験と技術が必要となります。もっとも高能率なコンプレッションドライバー帯域が全段交流点火のLM91Aですから尚更です。

SV-12D(2005年~)12AU7/5963 × 6, 2/3Wayチャンデバ

ドライバー帯域のLM91A(2012年) 全段交流点火200Bシングル
半日がかりで無事終わったマルチ調整ですが、結果的には上手くいってHさんはご満悦。わたしは脂汗タラタラ…という休日になりました。