6日からの始業の準備を兼ねて出社するとたくさんの年賀状がポストに入っていて一通づつ読ませて頂いているのですが、今年ほど「真空管オーディオフェアで会えるのを楽しみにしています」というメッセージが多い年はありません。
2年連続で中止となって今年の開催も予断を許さない状況ですが、いかに皆さんが同好の士と共に音を聴く機会を待っておられるのかを身に染みて感じています。
そんななか、今日はNさんがご自身で組まれたSV-Pre1616Dを携えて遊びにいらっしゃいました。

写真左がNさん製作の実機。右は製品開発時の音質評価用デモ機です。自作二台目にして堂々たる出来上がりですね。測定をしたところ、残留ノイズ,周波数特性,ゲイン,歪率すべてOKでした。お見事!
Nさんはモノづくり系企業に従事されていらっしゃるということですが、すべてが数字(定量)の世界で生きていることもあり、オーディオのような感性(定性)の世界を味わってみたかったと仰っていました。
定性評価=個人の嗜好に基づいた判断と思いがちですが、本質は数字(測定や物理的検証)には現れてこない物性を検出する極めて有効な手段です。例えば多極管よりも三極管の方が聴感上の”温度感が高い(=温かい)”とか、SV-Pre1616DではオールX7よりもオールU7の方が”ゆったり鳴る”感覚というような指標は測定という行為からは検出することが出来ません。定性評価のことを「官能評価」ともいいますが、言い換えれば特性の先にある「如何に感性に訴えることが出来るか」…私たちの仕事の最も重要な側面といえるかもしれません。
イベントのデモでも何度となく申し上げてきたことですが。出力は小さい、消費電力は大きい、数値特性も悪い…これだけ見れば明らかに劣っている真空管アンプが何故いまの時代に生き残っていて、コロナ禍のなかで大幅に出荷台数を増やしているのか…それはまさに定量を超えた定性的(官能的)魅力が見直された結果だと感じているところです。
他方、測定という行為を通じて自身の装置の定量性を担保出来、そのうえで感性に委ねて評価出来る方は少数で、ほとんどの方は定性のみで判断せざるを得ないのも実情です。せめて作り手である私たちと使い手である皆さんが同じモノサシを持って音を語ることが出来れば、私たちはより近くいられる筈。そういう意味でも音を共有できるイベントも大切なコミュニケーションの場といえます。
ありがたい事に
三冊の本についても再び出荷が伸びてきているとのことですし、
MUSIC BIRDも新規契約いただける方が増えているのは本当に嬉しいことですが、今年こそナマで皆さんの前に立たせていただいて、一緒に音を聴いて楽しめる機会が戻ってきて欲しいものですね。今年はぜひ!と思っています。