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トラブルシューティングTips~もしペア球の片方が壊れたら?…~

今日も小ネタです。多くの真空管アンプユーザーが経験したことのある話。ペアで買った出力管の一本が壊れてしまったらペアで買い直さないといけないの?というテーマです。今日もそんなSOSが飛び込んできました。

SV-S1616Dをお求め下さったFさん。詳しくは伺っていませんが何らかの事由で片方の300Bを壊してしまわれたということで「ペアで買い直さないといけませんか?」とのお問い合わせでした。出来れば残った一本は使いたいと思うのが人情ですので、生き残った方の一本を送っていただいて手持ちの在庫からペアとなり得る個体を簡便に再選別した過程を今日はレポートします。

用意したのはSV-501SE。FさんのアンプはSV-S1616D…なんで違うアンプが出てくるのかと言えば501SEが固定バイアスでIpメーターがついているので粗選別にピッタリだからです。自己バイアスのアンプでは個体差を吸収して電流値を一定にしようとする或る種の自己帰還動作を行うことから、真空管それぞれのバラツキをシビアに検出する目的には向いていないのです。
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501SEの左に挿さっているのがFさんからお送り頂いた300B。右はデモ機で使っている同じPSVANEです。この状態で正確にバイアス調整を行います。つまりLチャンネルがFさんの300Bで設計値通りのプレート電流が流れるようにアジャストされた状態をつくります。

次に無作為抽出したPSVANE300Bを数本用意し、アンプの電源を切ってFさんの300Bと入れ替えて電源をONにします。注意したいのはRch側は一切触らない(タマもIp調整もそのままの状態で実験する)ことです。

300Bに限らずどんなタマでもバラツキがありますから、別のタマをLchに挿すと先ほどはピッタリだったIpメーターの指針が上にずれたり下にずれたりすることは想像頂けるでしょう。つまり順次入れ替えておくことでFさんの300Bと同じ位置に指針が固定するタマを選べば近似したEp-Ip特性を有するペア球と言えることが出来る筈。この作業を繰り返して何本か候補球を選びだしたところで一次選別は完了です。
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次に念のためFさんと同じS1616Dで追認します。Fさんの300Bと予選を通過した個体を組合わせて測定していきます。自己バイアスアンプの場合はハムバランサーの中点電圧=プレート電流と読み替えることが出来ます。

Fさんからお借りした300Bで81.5Vが検出されました。S1616Dのカソード抵抗は2.4kのパラですから1.2k。つまりFさんの300Bはプレートに81.5÷1.2=67.9mA流れていることになる訳です。一次選別した個体のなかで今回一番近かったのは79.5Vでしたから79.5÷1.2=66.3mA。両者の差分は僅か約1.5mAで率換算で3%強ですのでペア性に全く問題ありません。めでたくFさんの300Bは無駄にならずに済みました。
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ちなみに私どもではプレート電流だけでなく相互コンダクタンス(Gm)も診ています。上の写真左下のACミリボルトメーターは二針式でL/Rの出力電圧を同時にモニターできる便利モノですが、画像の状態はL/Rのゲインが完全に一致していることを示しています。タマによって1dBのゲイン差は普通に出ますので、なるべくゲインが揃うようなタマを選別すればなお結構という訳です。

この二段階選別を何故するかというと、いわゆるチューブチェッカーによる選別はアンプでの実動作条件とかなり違っていることが多く、お店ではペアだと言われて買ったタマが実は自分のアンプではイマイチということも時に発生します。せっかく自社設計のアンプで使って下さっているので、出来ればベストチョイスを…と思ってやったのがこの方法だったという訳です。手間はかかりますが安心が一番です。

今日はまだ当分帰れそうにありません。地元コミュニティFM局のクラシック番組はコロナ発生以降、会社で録って編集も自分でやるようになりました。最初はそんなもん出来るか!と思っていたのですが何でもやっているうちに出来るようになるから不思議なものです。
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編集が終わったらMUSIC BIRD収録用のアンプと真空管を車に積んで準備OK…となるのは何時でしょうか?来週の特選中古の準備もまだまだ…今日はもう少し頑張らないといけません。



by audiokaleidoscope | 2021-12-15 23:14 | オーディオ

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