今日はWestern Electric 300Bのレポートを送って下さったMさんの素敵なリスニングルームをご紹介から。非常に上品な空間です。一枚板のスピーカーボードが超おしゃれ!

スピーカーはAltec 604B(605B Cabinet)。中央は手回しの蓄音機ですね。HMVでしょうか。

スピーカーの後ろに目立たぬよう置かれているのがLM91A(300Bシングル)。お納めしたのは2012年…光陰矢の如しですね。いままではPSVANE WE300Bで聴いておられたのですがWestern Electric 300Bの再生産が決まり、満を持してグレードアップとなりました。
Mさんからは
WE300Bに差し替えて聴き始めました。
その瞬間,「エッ!?」でした。
音像がクリアで奥行き感があり,低域が伸びやかに鳴り始めました。
違いがあるのは当然でしょうが,こんなにも違うものかとただ嬉しく唖然となりました。
たまたま部屋の外にいた娘が,「何か変えた?えらくいい音よ。」
という次第でした。
とても満足しています。
本当に違うものなのですね。
色んなジャンルのCDをとっかえひっかえ聴いています。
という嬉しいメッセージを頂戴しています。私どもが提供する機器は手段。目的は良い音楽を良い音で愉しんでいただくこと…こういうメッセージが忙しい日々で疲弊している身にとって何よりの活力です。

フロントエンドまわり。デジタルはNAGRA(スイス)中心のようですね。ターンテーブルは垂涎のEMT 927st ! 無骨になりがちなプロ用機器を上品にまとめておられるのは流石。写真を拝見するだけで美しい音楽が聴こえてくるようです。
続いての話題は最近恒例になりつつある今日のメインテナンスレポート。お題は随分前にYさんからお預かりしたVP-3488(EL34プッシュプル)です。

この個体はいまから10数年前にお求め頂いたものですが、組立完了後の通電時にアンプが発振を起こして以来そのままになっていたとのことで修理が出来るか確認する意味でお預かりしました。
当社で確認したところYさんが仰っていた通りLchの出力トランスの一次巻線のインダクタンスが著しく低下していて使用できない状態。このVP-3488は当時他社でOEM生産したもので海外製ですからメーカーサポートも切れパーツ供給も終了しています。Yさんには事情をお話して一旦ご返送の準備にかかったところでハタ!と思いつきました。
姉妹機VP-3000(300Bプッシュプル)から外した出力トランスが二個だけあった筈…一次側インピーダンスが3.5kに変わって元の出力トランスについていたSGタップが無いけど三結で動作させれば復活できるのではないか、そんなアイディアです。

上の写真はすべての作業を終えた実機ですが着手前にYさんにダメ元でチャレンジさせて下さいと申し上げたところ、やってくれ!ということで回路検討からスタートしたのが先月。VP-3488とVP-3000は共通シャーシでトランスケースサイズも同一。取付寸法も一緒ですから機構的改造は不要なのが幸いし、短期間で作業とデータ取りまで終えることが出来ました。
元々はEL34/ULプッシュプルで出力が40W弱の3488ですが出力トランス生体移植の結果、三結で24W+24Wに下がったものの音質的にはしとやかさが出てショールームのJBL4344が気持ちよさげに歌っています。

実はこのトランス、中古品買取り依頼をいただいたVP-3000から外して保管していたもの。残念ながらそのVP-3000は他の要因で不動だったのですが、今回このような形で活かさせていただけることとなり、提供くださった方、うけついだYさん、そして作業させて頂いた私ども含めて”三方よし”となったことをとても喜んでいます。
…こんなことばっかりやっているから修理に時間が掛かるんじゃないか!とお叱りをいただくような内容ですが、生みの親としては出来る限りのことをさせて頂きたい、想いはそれだけです。一遍にはできないので一台一台…皆の協力を得て丁寧にやるのが大切だと思っています。