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エレキットTU-8900で聴く 現行ハイクラス300B総まくり

今日は二つのお知らせです。まずは電波新聞WEBにてインタビュー記事の掲載が始まったお知らせから。

今回が第一回ですが3~5回の連載記事になる見込みということです。以前から当社を知って下さっている方にはお馴染みの内容ですが、ここ数年で大幅に新規ユーザーさんも増えているので、ご参考になればと思い取材をお受けさせて頂きました。”Sunvalley Audio今昔物語”的な内容になるのではと期待しております。

続いては今日の本題、エレキットの新製品TU-8900(2A3/300Bコンパチブル シングルパワーアンプ)についてです。既にメーカーから正式にリリースも出ましたので、まずそちらを見てみましょう。
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エレキットホームページ

TU-8900は大ヒットとなったTU-8600シリーズの実質的後継機ですが、幾つかの大きな違いがあります。主要なところでは

・2A3/300Bコンパチ(真空管自動判別)
2A3と300Bは姉妹球的存在でありながらフィラメント, プレート, バイアス電圧とも大幅に異なるためコンパチ化は困難と言われてきました。私どもでは2010年に先鞭をつける形でSV-2300SE(コンパチプッシュプル)の製品化に成功、そして2014年以降はJB-320LM(コンパチシングル)で一台のアンプで2A3/300Bを楽しんで頂けるようになった訳ですが、それでも2A3/300Bの選択はスイッチで行うスタイルです。対してTU-8900は電源ON時に瞬時に出力管の内部抵抗を検出し自動判別しているところが更に先進的といえましょう。

・DC-DCコンバータ採用による超低残留ノイズ
300Bアンプはフィラメント直流点火が一般的で0.5mV~1.5mV/8Ω(程度)の残留ノイズとなるのが通常ですが、TU-8900は内部のDC-DCコンバータで300Bフィラメント電圧を生成していることから0.1mV~0.2mV(実測値:A-Weightedなし)というプリアンプ並みの超低残留ノイズを実現しています。

・NFB有/無の変更が可能
アンプ内部の基板上にあるショートプラグを移動(ハンダ不要)することでNFB有/無の音の差を体験できます。エレキットのマニュアルには「プリアンプを使う場合はNFBあり, TU-8900単体で使う場合はNFBなし(無帰還)で」と書かれています。試しにデモ機で測定(真空管:Gold Lion ECC82/PSVANE WE300B)してみたところ8Ω負荷で

NFBあり
F特10Hz以下~118kHz/-3dB, ゲイン17.7dB
NFBなし
F特12Hz~71kHz/-3dB, ゲイン24dB

という結果になりました。

少し脱線しますがNFB(Negative Feedback)とはなんでしょうか?NFBが広く知られるようになったのは1947年のウイリアムソンアンプからですが、大ざっぱに申し上げると増幅回路にNFBを掛けることによって

広帯域化
内部抵抗の低減(ダンピングファクターの向上)
残留ノイズの減少


等々のメリットがあり、現行の真空管アンプの大半が何らかの形でNFBの恩恵に預かっているといえます。一方で多量の(過重な)NFBにはデメリットもあります。NFBの基本が出力信号を入力に戻すことから

周波数特性(特に高域)の不安定化
ゲイン(利得)の減少
音質の悪化

があるということも広く知られています。一般的には直熱三極管で3dB程度, 多極管で6dB程度(まで)が好ましいと言われています。
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上図はNFBあり(約2.5dB)とNFBなしをイメージするために模式的に描画したものですが、TU-8900はメーカー発表で8dB, 当社実測で7dB弱のNFBが掛かっています。これは計算上ゲインが無帰還時の40%台まで下がる計算になります。ごく簡単に言えばNFBを掛ければ掛けるほど測定上の帯域が広くなる代わりにゲインが下がると理解頂ければと思います。

TU-8900では高品質な出力トランスの採用により多めのNFBでも特性,音質ともにデメリットは感じませんでしたが、以前から「ゲインは音力」であると申し上げてきましたので、当社では試聴はすべて無帰還モード(NFBなし)で行っています。

ちなみに10/1(金)オンエアのMUSIC BIRD「真空管アンプ一本勝負」ではTU-8900で各種ハイクラス真空管による比較試聴(無帰還モード)をお楽しみ頂けます。
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PSVANE WE300B (当社価格 税込89,100円)
価格はすべて出力管のみ、アンプ本体価格は含まず
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KR300B Baloon (定価 税込127,600円)

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高槻 TA-300B (定価 税込181,500円)
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ELROG ER300B (当社価格 税込165,330円)
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Western Electric 300B(2021年)

以上 5種類の比較を行っています。クリアネスと締まり優先の場合はELROG, KR, 高槻がお奨めですし、解れた倍音感優先の場合はPSVANE WE, 本家Western Electricが良いでしょう。無帰還モードではそれぞれの300Bの温度感や肌合いの微妙な差異まで感じられますので、是非オンエアでTU-8900の魅力を体験して下さい。

当社でのTU-8900の価格等詳細は9月上旬にホームページ上でお知らせいたします。ラインナップとしては

真空管なし
梅セット(JJ 12AU7/ PSVANE 300B)
竹セット(JJ 12AU7/ Prime 300B ver.4)
松セット(Gold Lion ECC82/ PSVANE WE300B)
最強バージョン(Gold Lion ECC82/ Western Electric 300B/ Arizona Cap.)


の5バージョン(+2A3で2パターン)の展開を予定しています。どうぞお楽しみに!



by audiokaleidoscope | 2021-08-29 17:38 | オーディオ

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