最近は日々入荷する
買取依頼品の品質確認(全16項目)とWestern Electric 300Bの出荷前確認に明け暮れる毎日です。

工場で精密な測定が行われファクトリーマッチドペアで入荷するWestern Electric 300Bの測定データが十分に信頼に値するものであることは以前のブログでお知らせしたとおりです。
他方、測定データというのはある仮想的動作条件を与えられた際の結果であり、実際自分のアンプでどういう振舞いをするかを知ることは非常に価値があることです。当社オリジナルアンプの完成品, 組立代行品, 中古品, 修理品には基本的に全て成績証明(測定データ)がつくのも、アンプであれ真空管であれ全く同じデータを示すものは二つとないからです。
今回Western Electric 300Bバージョンを設定したオリジナルアンプ5機種はプレート電圧/プレート電流/バイアス電圧全てが異なります。したがって実装される製品に実際真空管を搭載して全てのペアをチェックすることにしています。上の写真はSV-S1616D/300B仕様でご注文を頂いた300B群を確認している状況という訳です。
フィラメントのバーンインで一昼夜、続いて一次側(AC)電圧をスライダックで70Vから少しづつ上げていき少しづつ慣らしたうえでペア毎に行う ①残留ノイズ, ②左右ゲイン, ③最大出力, ④波形 ⑤外観 の確認は気の遠くなる作業ですが、結果的に提供側の私どもにとっても大きな安心材料となります。
実は今回まとまった数のWestern Electric 300Bの実装確認を行っていて発見がありました。下の写真をご覧ください。

これはWestern Electric 300Bに添付されている測定データで、左半分がLOT 0652(2006年度第4四半期),右がLOT 2126(2021年度第2四半期)です。今まで定説的に言われていた復刻版最後の量産が0613で僅かに0626が存在するという情報を覆すエビデンスであることにも注目ですが、見て頂きたいのはそこではなくて”Test Results"の内容です。
実は3月に入手したLOT 2113は特性的に06年までの復刻品と大きな差はありませんでした。僅か2ペアという少ない検証結果ですので被検体数が少なく検証といえるほどのものではありませんが、今回はN(母集団)が大きく中心値やばらつきの状況も非常によく分かったので偶然の結果ではありません。
Western Electric社の選別条件はプレート電流(Ib)に注目して行われていると考えられますが、プレート電圧(Eb)=300V, グリッドバイアス(Ec)=-58Vという動作条件におけるIbがLOT 0652では55.7mA。私どもで過去扱ったLOT 9936~LOT 0613でも標準的Ibは55mA~65mAでありました。そして先日入手した2ペアのサンプルもその範囲に入っていたのですが…
対して今回入荷したLOT 2126は最低で60mA強~80mA後半で散布しています。これが今ロットだけの現象なのかは分かりませんが、少なくとも今ロットは電流効率が10%~15%向上していることは間違いありません。
以前ブログでプレートの色が従来と変わっていると書きましたが、調べてみるとグラフェンコーティングを施した結果であり従来品と比較し比べてエミッション(熱電子放出効率)が向上するだけでなく、二次エミッションも大幅に減少と謳われています。その結果がこれなのか…という気もしますが本当のところは今後の入荷品を測定してみないと分かりません。
海外から聞こえてくる21年再生産ロットの音は浸透力があり解像度も高いというレビューも今回の発見と何らかの関係があるのか今後しっかり見極めていこうと思います。少なくとも今回の入荷分が従来品よりも電流が流れる仕様であることは事実です。2126の音もMUSIC BIRDで聴いて頂きたいですね。
MUSIC BIRDで思い出しましたが6/11(金)・6/25(金)の二回シリーズは”真空管アンプ一本勝負の守護神”、ジャズベーシスト小林真人さんゲスト参加による「
ベーシスト小林真人presents "All About Benny" SP盤で聴くベニーグッドマン一本勝負」です!
当番組では小林さんゲスト回は年初第一回に決まっていたのですが、諸般の理由で今年はこの時期にずれ込んでしまいました。小林ファンの皆さんには大変お待たせしましたが、前編(6/11)は小林さんご持参のアクースティック蓄音機中心、後編(6/25)はウエスタン7A+540AW/陣笠(いずれも1920年代の世界最初期の電気再生システム)で全編ベニーグッドマンのSP盤でお楽しみ頂きます。

小林さん持参のアクースティック蓄音機(日蓄:ニッチク)

WE7A+陣笠(中央), フォノEQ:SV-EQ1616D/USA-SPポジション

小林さんがジャズメンとして八面六臂のご活躍の傍ら、SPレコードのレクチャーやモノラル5ウェイの”
番台オーディオ”の達人としても知られる方。ぜひ小林さんナビゲートのSPアワーをお楽しみ下さい。
小林さんブログ