Brimar CV4003/12AU7の選別プロセス
2021年 04月 27日
そんななか私は遅れていたBrimar CV4003/12AU7の選別に追われているところ。Brimar 12AU7/13D5が早々に完売という状況のなかでUKに在庫がないか、いろいろとあたった結果、意外やBrimar CV4003があることが分かって直ぐに手を打ったのです。CV4003は言わずと知れたSpecial 12AU7。元々民生用途の真空管ではないので馴染みは薄いかもしれませんが、Mullard CV4003/M8136辺りは一本150ドル以上の相場で取引される人気球です。
1. 受入検査
まず海外から入った状態で受入検査を行います。この作業は外注さんにお願いしており、私どもに入荷する前に規格外の真空管は撥ねて頂いています。ご存じのように真空管には特性上のバラツキがあり、エッジサイド(裾野部分)特性の真空管は電気的には問題なくてもアンプでは電流が流れ過ぎたり流れなかったりするので、最初から良品判定をしないようにしています。
2.直流的選別(その1)
外注さんで試験に通った真空管が入荷すると私どもで実際一本づつ再確認します。まずGm(相互コンダクタンス)が”棄却値”(Critical Value)をクリアしているかどうかが第一関門です。Gmというのは分かりやすく言うと”ゲイン”(利得)。厳密には選別というよりも「使えるタマか使えないタマか」を再確認する工程で動作条件も通常よりも低めです。

Gmはどのような増幅特性を示すかの根拠となる重要なパラメータです。特に12AT7/U7/X7のような双三極管は管内に二つの三極管が封入されているので、その2ユニットのGmが近似していることが望ましいことからそれぞれ測定します。

3. 直流的選別(その2)
KS-15750-L1 で測定された値は実際のアンプでの動作条件とはかなり異なりますので、次のプロセスでは実際にアンプに一本づつ挿して動特性を確認します。今回は12AU7ですのでSV-192Sで動作させながら更に選別精度を上げていきます。実際外注さんで一次選別を通った個体でも私どもの直流的試験(1~2)で選別落ちする個体もわずかながら存在します。

ここまでの試験は動特性の確認だった訳ですが、ここからは測定+耳の両方で確認が必要です、交流的試験はノイズ選別というと分かりやすいかもしれません。直流的にはOKでもノイズが出てはアンプでは使えませんから、この交流的選別は特にヴィンテージ球では必須の作業の一つといえます。

その他、通電中の真空管を指で弾いてマイクロフォニックノイズ(共鳴音)の量や誘導ノイズ(動作中の真空管に手を近づけて現れるノイズ)の増減を確認します。ここまでやって合格した真空管が晴れて皆さんに向けて出荷できるという訳です。
