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ワールドプレミア!本家WE300B/2021年ロット 第二報(試聴編)

昨日の興奮の対面を経て本格的な試聴の準備に入ります。逸る気持ちを抑えつつ必ずやりたいのがバーンイン(初期枯化)です。私どもから皆さんにお納めする完成品あるいは組立代行品は機器によって20時間~50時間のバーンインを行っていますが、真空管(特に出力管)を更新する場合においても極めて重要なお作法の一つといえます。

もし皆さんのアンプが整流管を使用したアンプであれば方法は簡単。整流管のみ抜いて他の真空管を全て挿した状態で通電することでお手元のアンプが真空管エージングマシンに早変わりです。整流管を抜くことで各真空管にはヒーター(フィラメント)電圧のみが供給され、電流的に動作させるためのプレート電圧(高圧)がかからなくなりますので、例えていえば車のエンジンを暖気している状態、つまりギアが入っていない(=無負荷)状態で慣らしが出来ることとなります。

特に出力管のバーンインは極めて重要で寿命面からも有効ですし音の繊細感の向上やノイズ低減にも効果があります。今回ご紹介するような高価な真空管はもとより全ての真空管に対して有効かつ重要な施策といえましょう。

…少々脱線致しましたが本日の本題。昨日の午後から今日の昼までバーンインを行った新Western Electric 300Bの音質を確認していきます。試聴を客観的に行うために今回三種類のWE300Bを用意しました。
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いわゆる復刻WE300Bの代表格三種。左から99年第四四半期, 06年第一四半期, そして今回入荷した21年第一四半期の個体です。左のLOT 9952は当時の日本の代理店の別注品とも言われており、プレートがカーボンスートされておりピンも金メッキです。当時の通常品よりも価格が20%程度高かったと記憶しておりますが、1995~2006年までの復刻品のなかでは最高グレードと言われる逸品です(ちなみに9952でも非カーボンスート/通常メッキ品もありますので現物をしっかり確認する必要があります)。

よく見るとLOT 2113はプレートの色に関して黒味が少ないというか銀色に近い外観です。早速試聴に移っていきましょう。まずはシングル(SV-91B)での実験です。
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アンプを電気的に全く同じ状態にして同じ楽曲を全く同じゲインで聴いていくのはMUSIC BIRD収録と全く同じやり方です。しかしこうやって聴いていくと同じ本家Westernといえども年代によって出音にかなりの違いがあることがよく分かります。

まず一聴して分かるのはLOT 2113は復刻WE300Bのなかで最も低域のレンジが伸びています。伸びているだけでなく厚みを感じるローの表現です。LOT 0613は以前からやや高域寄りのバランスと言われてきましたが今回の比較で一層その傾向が明示的になったような気がします。またLOT 0613(正確にいえば2002年以降の復刻品)は管内真空度に個体差があると言われ、品質管理的にもWE社が相当苦労したと聞いていますが(当時正規ルートで日本に入ってきた個体は基本的にすべて検品をクリアした良品ですのでご心配なく)、LOT 2113はその課題もクリアしているようです。今回そのLOT 0613とLOT 2213の違いを外観から捕捉的に理解することが出来ましたのでご紹介しておきます。
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私のスマホで普通に撮ったグロー放電の状況です。同じ条件でLOT 0613を撮影してみたのですが目では見えても画像的に認識できないレベルでした。更に言えばLOT 0613のグローが管の上半分に茫洋と全体的に現れるのに対し、LOT 2113はLOT 9952と同様、管上部のマイカ板周辺に集中してグローが現れ輝度もかなり高いことが分かりました。

このグローはフィラメントからプレートに向かって放出された熱電子の一部がプレートに到達せず管壁に衝突した瞬間にイオン化して青く発光したものだと言われていて、必ずしグローが強く出る個体が優れているという訳ではないのですが、LOT間でグローの出方が均一である場合は品質(管理)が安定しているという見方もできます。ともあれ今回入荷したLOT 2113のグローは見事です。

全体の印象としてはLOT 2113は0613よりも9952により近い音で且つ9952よりも低域が豊潤でリッチな音という印象。”たっぷり鳴る”という言葉がありますが電気的には同出力でも音量が僅かに上がって聴こえます。

ちなみに今日の試聴ソース(CD)ですが
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Queen Of Turquoise / Basel RAJOUB

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の2枚。いずれもレンジ広い音源で且つ音の直間比率(直接音と間接音のバランス)に優れたお奨めソースです。

そしてシングルに続いてはプッシュプルでも音質確認を行っていきます。アンプは久々登場の86B。
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モノラル/トランスドライブのプッシュプル。最も濃い表現のシアターアンプ直系の音で中低域の厚みで聴かせる傾向なのですが、LOT 2113は一層その傾向を強めながらも高域の粒立ちの細やかさは復刻3種のなかでは群を抜いています。

この86Bはオリジナルと同じ純鉄の出力トランスのため周波数特性的には上が13kHz/-3dB程度までしか伸びていません。それがこのアンプの音質的個性を決定的なものとしていますが、いずれのWestern Electric 300Bでも高域不足は全く感じない中で特にLOT 2113は聴感上の高域が自然に伸びています。Western Electric 300Bはツィーター要らず、とよく言われたものですが、その伝説は今も生きているということでしょう。

…という訳で昨日入荷したばかりの新Western Electric 300B / 2113ですが、待っただけのインパクト以上の品質と音質を有していることが確認出来ました。今回私が入手した個体は現地の仲間が手配してくれたもので、日本への導入は正規輸入代理店の正式なアナウンスを待ちたいと思います(現在WEのHPから注文を入れても日本への発送は行っていない旨メッセージが出るようです)。

今回の試聴結果を踏まえ、急遽MUSIC BIRDで同テーマで収録を行うことにしました。既にかなり先まで収録は完了しておりますが、スケジュールを入れ替えて4月中旬から2回シリーズでオンエア出来るよう準備したいと思っています。MUSIC BIRD申し込みたいけどどうしよう…と思っていらっしゃる方には絶好のチャンスかもしれません。

なお今回のレポートは私が入手した4本の外観, 特性, 試聴の印象を個人的に纏めたものであり、Western Electric社の意見を代弁するものではありません。また同社製品の品質を予見あるいは保証するものでありませんので、ご了承いただいたうえで参考になさって下さい。どうぞ宜しくお願い申し上げます。


by audiokaleidoscope | 2021-03-17 23:59 | オーディオ

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