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ケーブル, ボード, インシュレータによる対策 ~Sさんの場合~

今日はSさん宅へ。納品後一ヶ月点検+諸々のチューニングの為です。
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SV-8800SE/KT120仕様TAOCのボードで制振。インシュレータはゴム脚から削り出しの金属製へ。床からの振動伝播が減ったことで聴感上のSNが改善。
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SV-310/PSVANE WE仕様もインシュレータを交換。
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そしてSV-8800SEの電源ケーブルはPS-01へ。パワー感アップで効果絶大。
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SV-310の電源ケーブルもPS-02へ。ここで効くのは静粛性。ノイズフロアがぐっと下がります。

このPS-01/02については月刊Stereo誌 2020年3月号での特集「真空管アンプに合うケーブルを探せ!」のなかで数多くのサンプルのなかからセレクトし製品化を行ったものですが、このなかで私どもが考える真空管アンプとケーブルの関係について振り返っておきたいと思います。

(以下 Stereo 2020/3月号より抜粋 転載許可 Stereo誌編集部)

序文 オーディオケーブルは”マイナスゼロ”を以て最良と為す
記・大橋 慎(サンバレー)

これまでのオーディオケーブルの試聴記事はやや感覚的過ぎて客観性という点ではやや物足らないと感じてきた。海外のオーディオ誌ではケーブルも一つのコンポーネントとして確固たる存在となっており、アンプでいうところの出力、 周波数特性、 歪率等の測定データや、スピーカーでいうところのT/Sパラメータなどの定量指標に基づいた客観的レビューが展開されている。

にもかかわらず、なぜか我が国ではケーブル単位長あたりのインダクタンス、静電容量、直流抵抗すら開示されないのが一般的で、聴感に基づく試聴記事が大半となっているのは何とも不思議な話である。

たとえばオーディオケーブルの試聴記事の一部に”低域がよく出る”とか”高域が伸びる”等、あたかもケーブルが何かを足しているかの如く書かれている記事が散見されるが、これは電気的には正確な表現とはいえない。個人的には”理想ケーブルは「マイナスゼロ」”、電気的に損失が限りなくゼロに近いもの、つまり入力された信号を些かもスポイルせず伝播されることを究極の目標として存在すべき、と考えている。

そこで今回の真空管アンプに合うケーブルを選ぶという企画に対し、半導体アンプと比較して真空管アンプは物理的(電気的)にどういう振舞いをするかを、インピーダンスと内部抵抗という二つの切り口で検証している。本特集後半部分の対談はまさにそのドキュメンタリーである。

真空管アンプに合うケーブルとは?

製品の設計において、機器間の電圧伝送に関する部分について言えば前置機器と後続機器のインピーダンス比が重要である。一般的に前置機器の出力インピーダンスは出来るだけ低く、後続機器の入力インピーダンスができるだけ高い状態(これを”ロー出し、ハイ受け”という)を設計で担保する。ロー出し、ハイ受けの原則は、後続機器の入力インピーダンス÷前置機器の出力インピーダンス、で容易に計算が可能である。

例えば真空管機器の一般的な値として、

プリアンプの出力インピーダンス:1kΩ
パワーアンプの入力インピーダンス:100kΩ

前後が多く、その比は100kΩ÷1kΩ=100倍となる。一般にその比は20倍以上が望ましいとされていて、比が大きいほどケーブルに流れる電流が少なくなり、ケーブルが音質に及ぼす影響(損失)が小さくなる(=マイナスゼロに近い状態)となる。対して半導体機器の入力インピーダンスは概ね10k〜20kであり、真空管アンプのそれより遥かに低いことから、

仮説1
・ラインケーブルによる影響は 「半導体アンプ > 真空管アンプ」

という事が電気的に言えるのではないか。分かりやすく言えば出力÷入力のインピーダンス比が大きければ大きいほど流しそうめんを流す竹の勾配(傾斜)が急でそうめんが引っかからずにスーっと流れるイメージをしていただくとよいかもしれない。

続いて電源ケーブルに関しては、アンプの動作電圧から検証すると真空管アンプはコンセントの一次側(AC100V)を真空管の動作に必要な数百ボルトに昇圧する必要がある。仮に真空管の動作電圧を400Vとすれば電源から流入するノイズも4倍となる。対して半導体アンプで動作電圧が50Vと仮定すると電源に混入するノイズは1/2(真空管アンプの1/8)になると計算できる。加えて、そもそも内部抵抗(電源インピーダンス)が高い真空管アンプは半導体に比べて電源由来のノイズに敏感である。従って、

仮説2
・電源ケーブルによる影響は「真空管アンプ > 半導体アンプ」

となる筈だ。さらに言えばフォノイコライザー、プリアンプより大電力を消費し動作電圧も高いパワーアンプが最も電源ケーブルの影響を受けやすいといえるだろう。

ここまでが物理的にみたラインケーブル、電源ケーブルの動作の基本である。ただしそれ以外にも、様々な要因が音質に影響を与えているのは間違いない。例えばケーブルのシールドを強固にすればするほど、外来ノイズに対しての耐性は高まる一方、単位長あたりのキャパシタンス(静電容量)が増えることとなり、高域レスポンスの低下をもたらす原因ともなり得る。あちらを立てれば此方が立たずというのはオーディオにおいてもまた然りなのである。

要約するとケーブルによって与えられる電気的損失を可能な限り小さくすることがオーディオケーブル選択の重要なポイントであり、その結果”機器固有の音がより色付けされずに表出する”と仮定すれば、機器設計者としては大いに歓迎すべきところだ。本稿を以て世にいうケーブルブームに一石を投じることが出来れば幸甚である。 (以上)

真空管機器はデバイスそのものの個性で勝負!というところが多分にあるため、いわゆるアクセサリー類には疎いというファンの方もいらっしゃった訳ですが、近年ケーブルやインシュレータに対する理解がかなり高まってきています。実際今日のSさんのケースのように真っ新(まっさら)の状態と対策後の状態を比較すると、①静寂感 ②パワー感 という一見して相反するように思われる要素が両立して大幅に改善されるのは驚くべきこと。私もこの効果に開眼したのは3年ほど前からのことですが、今まで何とも勿体ないことをしていたものだと感じています。

更に言えば真空管アンプは電気的に「電源ケーブル > ラインケーブル 」と言いつつもQrinoのように素晴らしいラインケーブルがあるのも事実で実に奥が深いと感じます。機会あれば是非また公開の場で「真空管アンプに合うケーブルを探せ! Part2」をやってみたいものです。


by audiokaleidoscope | 2020-09-05 23:59 | オーディオ

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