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雄大な低域と爽やかな高域! Arizona Cap.が登場します

JENSENコンデンサーの製造終了が明らかとなって最大の懸案事項は後継指定銘柄を何にするかでありました。カップリングコンデンサーは真空管アンプの音質の要の一つ。ベクトルを誤ると折角の真空管アンプの個性が活かされないばかりかマイナスに効いてしまうことすらあるキーパーツです。

今年に入って20種類程度のサンプルを購入し、アンプに実装して音質の確認を繰り返してきました。一般にプリアンプはリニアリティを重視してフィルムコン, パワーアンプは真空管ならではの響きの良さと豊かな表現力を重視してオイルコンという考え方がデフォルトでありますが、敢えて市場で評価の高いフィルムコンをパワーアンプ用に試用してみたり。ただ結果的にJENSENに匹敵する音質のコンデンサーに出会うことはありませんでした。

考えあぐねながら自分のパーツ棚を整理していた時のことです。引き出しの一番奥から見慣れないサンプルが出てきました。錫メッキされた真鍮ケースの両端をガラスで閉じた強固な「ハーメチックシール」構造、そしてヴィンテージテイストをイメージさせるサボテンのマーキング…暫し過去に想いを馳せ、2010年ごろ懇意にしていた方が興したオーディオメーカーからサンプル支給していただいた「Arizona Cap.」(アリゾナ・キャップ)であることを思い出しました。

その頃、私どもではJENSENが定番化しており、そのまま保管していた訳ですがArizonaがUSA系ヴィンテージコンデンサーの雄、West Cap.(ウエストキャップ)の事業を継承した会社であることも思い出しました。詳細はこちらをご覧ください。

Arizonaには2つのシリーズが展開されています。Type C50309 (通称Blue)とType C50313(通称Green) がラインナップされています。JENSENにも錫箔と銅箔の二種類があったのに似ていますが、比較試聴の結果Greenの方が帯域が広く高域はスムースで繊細であることに加え、特筆すべきは低域の豊かな量感と弾むような切れ味の両立した表現は大きな魅力でした。
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左が一般的なフィルムコン(0.22uF)、右が同容量のArizona(Green)です。驚くべきサイズの差ですね。ちなみに0.047uFのみBlueでご用意します(Greenではラインナップされていないため)。

Arizona Cap.については輸入元ホームページでこのように書かれています。

米国には同時期に軍需用、航空宇宙産業として更に高信頼性を誇る、MILスペックの別名ハーメチック・シール(気密構造)とも呼ばれるオイル・コンデンサーが存在していました。Sprague社のVitamin-Qは今に至るまでこのタイプのオイルコンの代名詞ですし、その他当時はCDE, GUDEMAN, AEROVOX, SANGAMO, West Cap, DEARBORN社などがこれらの軍事用途のコンデンサーを生産し供給していたのです。

(中略)オーディオ用としてはあまりに高価で一部の業務用アンプに採用例はあるものの民生用途で使用された例は皆無ではなかったかと思われます。ただしこれらのコンデンサーをオーディオ用として使用した場合、粘性のあるオイルが誘電体箔の振動を絶妙にダンプするためか、中低域の厚い品位のある独特の滑らかな音質が我が国のアマチュアの真空管アンプファンに長く支持されてきたのです。

ではアンプに実装した事例をご紹介します。
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皆さんよくご存じのSV-S1616D/300B仕様です。写真左上に横向きについているのが電圧増幅段のカップリング。そして二つの300Bソケットの間にあるのが電力増幅段とのカップリングです。
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よい機会ですので主要モデルの容量別使用数量一覧もアップしておきましょう。
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話は戻ってこれがSV-S1616D/300B仕様をArizona化した後の写真。アップグレード前と比較するとその存在感が分かり頂けるのではないでしょうか。
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これが拡大写真です。注目すべきはArizonaの方向性です。JENSENにも推奨取付方向性があるようにArizonaにもメーカー推奨の方向性があり、サボテン側が後段グリッド(=サボテンのない側が前段プレート)が望ましいとされています。物理的には巻き始めが入口側, 巻き終わり(サボテン印)が出口と覚えておかれてもいいかもしれません。

Arizonaアップグレード後のSV-S1616D/300B仕様(WE300B)を試聴してみます。プリアンプはSV-Pre1616D(Brimar 12AU7)です。
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デフォルトのフィルムコンと比較して最大の変化は低域です。通常シングルでは低域が崩れがちになるAutographのローエンドにしっかり形があり、聴感上のパワー感が明らかに増して聴こえるところが最大の魅力です。そして一般に高域のリニアリティではフィルムコンに劣ると言われるオイルコンですがArizonaの高域は爽やかに伸び且つ滑らか。定位もよく空間表現も非常に優れています。

最も真空管アンプの重要な魅力である「音を絞っても音が痩せない、音を上げてもうるさくない」を見事に体現しているArizona Cap.は7/15(水)夕方頃から正式販売開始予定(定番扱い)です。どうぞお楽しみに!



by audiokaleidoscope | 2020-07-11 15:01 | オーディオ

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