先日第一報をお伝えした
Brimar 12AU7が入荷し電気的,音質的評価が終わりました。数ある12AU7系真空管のなかでもトップクラスの音質です。

こうやって見ると何の変哲もない双三極管でMADE IN ENGLANDのプリント以外に目立つところはないように見えます。しかし…

左からJJ ECC82(梅), Gold LionECC82(竹), Brimar 12AU7(松)
注目頂きたいのは管内のプレート(のサイズ)です。BrimarはいわゆるLong Plateと呼ばれるタイプで実プレート損失的にも余裕のある造りになっています。Brimarの双三極管でLong Plateは1960年代までと言われていますので、ファクトリーコード(製造時に印刷される製造管理番号)を見てみました。

極めて見難いですが写真中央に「
3J0/1571」と印刷されているのがお分かりになるでしょうか。これはBrimar独自の識別子で下四桁1571=12AU7/CV4003です。上3桁は製造時期を示す符牒で
1桁目=週
2桁目=月
3桁目=年
を示しており、この個体3JO/1571=1960年10月第3週に製造されたBrimar 12AU7です。今回入荷した数百本から無作為抽出したところ、その他に1B1/1571=1961年2月第1週, 3E1/1571=1961年5月第3週など複数の製造時期の品物が混在しておりますが内部構造は同一です。
調べてみると電気的なバラツキは大きくありませんが、私どもでは一本売りのほか、2本マッチド, 3本マッチドでも販売しますが全数チューブチェッカーでGmを測定して選別します。

これが私どもの物流センターにある選別機

HICKOK社がWestern Electricに納入したKS-15750-L1(校正済)で一本一本測定します。
では試聴してみましょう。

SV-S1616D/K150では初段+ドライブ段で3本

SV-S1616D/300Bではドライブ段で2本

SV-EQ1616DはV3(カソフォロ段)で1本, SV-Pre1616Dでは増幅段+カソフォロ段で3本
と差し替えて時間を掛けて試聴した結果、12AU7族のなかで
最も透明感の高い音質であることが確認出来ました。Mullard CV4003と比較するとCV4003は中低域の豊かな倍音とゾリっとしたリアルな音触(音の手触り)感が魅力ですが、Brimar 12AU7はクリアで透明度が高く高域レスポンスの伸びた聴感です。
高域が伸びたといってもTelefunken(独)のような音像的に輝かしいエッジの効いた高域でなく、音場的表現(空気感)に長けたしなやかさが際立つ表現。Gold Lion(竹)のようにバリバリと骨太に鳴る感じではなく、敢えていえばヴォーカルや小編成のクラシック, ピアノトリオなどをリリカルに鳴らすのにぴったりと言えるでしょうか。
気になる価格は一本5,000円, ペア11,000円, 三本マッチド16,000円(それぞれ税別)の予定です。竹のGold Lionと大きな価格差がありませんが、私のなかではやはりBrimarが松という位置づけ。ホームページアップは7月7日(火)午後7時の予定です。どうぞお楽しみになさってください。