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オーディオは”普通かっこいい”へ

いつもの快速電車に乗って何時何分に駅について会社に着くのが何時。今日の予定はあれとこれで何時には帰宅できるな…と先が読める日々に慣れてきた私たち。それが急に”諸般の事情で次の駅に緊急停車しますので全員降りて下さい。なお次の列車がいつ来るか全くわかりません”みたいな状態になって半ば途方に暮れているような毎日です。自分はこれから何をすべきなのか…と考える時間が増えて日々の過ごし方もかなり変わってきていることを感じます。

オーディオ業界で言えば今までは小型で軽量で多機能なモノが主流だった訳ですが、今年に入って徐々に流れが変わってきています。この現象をどう端的にお伝えするべきか難しいところですが「自分と共に動くオーディオから留まって向かい合うオーディオ」に変化しつつあるというのが一番分かりやすいでしょうか。

たとえばスピーカー。ヘッドフォンブームによってHiFi用スピーカーは2010年代に入り下降の一途をたどりました。まとまって売れたのはスマートスピーカーかBluetoothでスマホと連携する小型のパワードタイプという状況がしばらく続いていたのですが、ここへきて据置型のパッシブスピーカーが徐々に回復しています。

そして価格帯。オーディオは長く”ふたこぶラクダ”型で超高級品と新興国向けBOP(Base Of the Pyramid)製品の二極化でした。それがここへきてミドルクラスゾーンに需要が移ってきていて逆に極端な価格訴求モデルは動きが鈍くなっていることが大手の数字からも明らかです。そしてこの流れはアンプにもプラスの影響を及ぼしていますし数年ぶりに据置型のCDプレーヤーが好調というのも多くの人が予想しないことでした。

アナログにおいてもカートリッジが付属して内蔵アンプとスピーカーで他に何をつながなくても音が出る1万円前後のターンテーブルから、今は数万円~10万円の半ばの製品で品質の良いものは非常に好調です。”頑張りすぎない、でもちゃんとしたものが欲しい”という感じなのかもしれません。”このカートリッジ、MMでそんなに高くないんだけど気持ち良い音なんだよね”、”このケーブル2万チョイなんだけど効くんですよ”という話題に皆さんとても敏感。かつて電源周りに何百万かけてマイ電柱を立てることが憧れだったのが、今は数万円で買える”仮想アース”でSNをアップ!みたいな方が非常に増えているのです。
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かく言う私も気がつけば私もその”普通かっこいい”流れに乗っていたようです。CD再生環境でいえばベルトドライブのトランスポート+真空管DAC+マスタークロックで最高の再生環境を目指してきた訳ですが、いまは気がつけば一体型CDプレーヤーでまとまり良く骨格のしっかりした音を聴く時間も多いですし、アナログもハイクラスMC+高級フォノEQの組合せと同じくらいMMカートリッジ+EQ1616Dでジャズを聴く時間が長くなっています。

こういうリラックスした聴き方が出来るようになってきたのも、いま音楽と向き合う時間が長く恐らく今後もしばらくこの状態が続くことを知らず知らずのうちに分かっているからかもしれません。世の中は”絶えず右肩上がり”であることを私たちに求めてきた訳ですが、その幻想が吹き飛んで新たな価値観が生まれつつある、そういう気がします。


by audiokaleidoscope | 2020-04-26 23:59 | オーディオ

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