昨日のエントリーに関して多くの反響をいただきました。まずは中盤の「実は一般的に行われるオーディオ機器の測定法(入力信号が1kΩの正弦波)ではその差を読み解くことは出来ない(違いは現れない)のです」という下りについて実際の波形で比較してみたいと思います。

測定に使用される1kHz正弦波(左)と音楽信号(右)

測定信号の
リザジュー(左)と音楽信号のリザジュー(右)
高校の物理の定理で空気抵抗は0とする、とか反発係数は1とするというような実際はあり得ない前提条件設定がオーディオの測定にもあるという訳です。実際は動的な信号の変移によって現れる変化こそが私たちが感じる音の違いなのだと思います。
もう一点、昨日の書きぶりですとSV-Pre1616Dに低域のドライブ力がないように読めるんだが…というご質問が二三ありましたが決してそうではありません。

これはたまたま今日取得したPre1616Dの周波数特性の一例です。低域-3dBポイントの周波数がL/Rとも5.6Hzというのは一般のコンデンサー出力のプリアンプとしては異例ともいえる広帯域で、これこそが出力インピーダンスを低く設計すること(”ロー出し”)の重要性を数字が如実に表しているといえると思います。
書籍でも説明しておりますが、オーディオ機器の測定データというのは人間でいえばレントゲン写真あるいは定期健康診断の結果みたいなもので、その人の本質のごく一部して伝えてくれません。その意味でも定量(特性的評価)の先にある定性(感覚的評価)の重要性が些かも揺らぐものではないのです。