今日は日帰り滋賀,京都。そのなかで滋賀のKさんのケースを改善事例としてレポートしたいと思います。
Kさんと出会ったのはたぶん4,5年前。最初はショールームの試聴がきっかけだったと思うのですが急速に真空管アンプに傾倒され、当初からお使いだったTannoy Turnberryを鳴らし切ることを目標に様々なトライをされてきました。そして今日はハード的には完成という素晴らしい音が出ていることを確認させて頂きました。

これがKさんのスピーカー。いずれもTannoyで右がTurnberry, 左がIIILZ。エンクロージャーサイズは異なりますが、いずれも10インチ(25cm)の同軸2ウェイです。

これがKさんのTurnberryを鳴らすシステムです。いわゆる
パッシブ・バイアンプシステムで低域,高域ともに300B。低域:LM91A(300Bシングル), 高域:SV-86B(300Bpp)で通常のバイアンプとは並び方が逆です。一般的には消費エネルギーは圧倒的に大きい低域側をプッシュプル,高域側を小出力のシングルにするのが推奨パターンですが、Kさんの場合はスピーカーの能率が十分に高いこと, マンションという環境から大出力は不要であること, そして何より響きのバランスにおいて最良の選択をしたいということからこの組み合わせとなりました。
実は以前、わたしもAutographをPX25パラシングル, スーパーツィーターをKさんと同じ86Bで鳴らした時期が長かったのですが、これも86Bでしか出ないシルキーな倍音と音場の広大さが他のアンプと比較できないほど美しかったからです。

左:SV-86B(WE310A, WE311B, PSVANE WE300B, WE274A)
右:LM91A(WE310A, WE310A, PSVANE WE300B, PSVANE WE274B)
ずっとLM91A単独で鳴らされてきたKさんですが、半年ほど前にショールームのマルチアンプの音を聴かれて衝撃を受けられました。
音を聴かれててJBLユニットをベースとしたマルチシステム導入に向けて検討を開始されましたが、私としては折角これまで育ててきたTurnberryの音を手放すのは余りに勿体ないと感じてきました。仮にサブとして中型クラスのマルチシステムが構築できたとしてもアンプが共用となった時に繋ぎ替え(設定変更)が極めて複雑になることから私としてはお話を伺いつつも、その真意を確かめる必要を感じていたので今日お邪魔させて頂いた訳です。
結果、今日の音を聴かせて頂いて、これ以上のシステム拡張は不要である旨申し上げ、マルチシステム導入は一旦凍結という線でお奨めさせて頂きました。それだけこのオール300Bパッシブバイアンプシステムの音が美しかったということに尽きます。
そしてもう一点、昨年秋から取り組ませていただいてきたKさんのIIILZのフルオーバーホール。レリックさんにすべてお任せして完全に修復して欲しいとお願いしてきました。
このエントリーの中盤に真空管オーディオフェアにおけるレリックさんの注目度の高さの一端をご理解頂けると思います。製造後20年, 30年と経過しているスピーカーユニット, ネットワーク等見えない部分がどのように劣化しているか気になっていても知る由もないという方が多いのではないでしょうか。
昨年暮れに全ての作業が完了し、私どもから返送申し上げてからちょうど一ヶ月。今日初めてオーバーホールの成果を見させて頂きました。

交換済部品(の一部)
その他CD-Rでbefore/afterの画像がたくさん記録されているのを見させて頂きました。以下はそのごく一部です。

before

after

before

after
スピーカーは構造はシンプルなだけに劣化していても音が出るところが良い面でもあり厄介な面でもあります。しかしながら内部がこんなに錆び錆びでネットワークのコンデンサーは軒並みリークしていて接点は金属疲労と酸化被膜でヨレヨレであることまではむしろ”見ぬもの潔し”と言えるのかもしれません。
正直コスパは高くありません。しかしながら品質には代えられないという思いから私どもでご相談を受けたスピーカー修理やオーバーホールは基本的にすべてレリックさんにお願いしています。大切なのは単にモノの中継をするだけでなく、お客さんが気になっていること、不具合の詳細を私どもなりに理解して電気的状況と予想される作業対象箇所を予めターゲットして託すことにより、より確度の高いメインテナンスが出来ると思ってきました。直接でも私ども経由でも価格も納期も勿論品質も全く変わりませんので、ご心配の方はお気軽にご相談頂ければと思います。ちなみに第二のAutographのユニット,ネットワークも10年近く前にオーディオラボ時代のお二方に託したのですが、いまでも全く問題なく新品同様の音質を維持しています。
再生なったKさんのIIILZ。鮮度の高い音を聴かせながらも”いぶし銀”と言われるIIILZならではのグレイッシュトーンは健在で、まるで昨日作られたばかりの新品のような外観,音質でした(現在レリックさんでは多忙によりエンクロージャーを含めた外装の修復は休止されているそうです)。こういうお手伝いも私どもオーディオ屋の大切なミッションの一つだと思っているところです。