今週は出張つづきでブログを書く時間が取れませんでしたので、一週間まとめて振り返ってみたいと思います。長文ですがお付き合い頂ければ幸いです。
1/22 Stereo誌 試聴室にていつもは”聴いていただく”ことが多い訳ですが、今回は”聴かせていただく”機会を頂きました。まだオフィシャル解禁前なので詳しくは述べませんが、当社アンプ(SV-Pre1616D+SV-P1616D/KT120)をリファレンスにしたオーディオケーブル(電源ケーブル,インターコネクトケーブル)の比較試聴を行い、自らテスターとして自社アンプに最も相応しいケーブルを選び出すという企画です。
これまでのオーディオケーブルの試聴記事はやや定性的,感覚的に過ぎて定量性という点ではやや物足らないと感じてきました。海外のオーディオ誌ではケーブルも一つのコンポーネントとして確固たる存在となっており、多くの場合アンプで言うところの出力, 周波数特性, 歪率など、スピーカーでいうところのT/S(ティール・スモールパラメータ)などの定量データに基づいた客観的レビューが展開されているのですが、なぜか我が国ではケーブル単位長あたりのLCR(インダクタンス,静電容量,直流抵抗)すら開示されないのが一般的で聴感に基づく試聴記事が大半となっています。
今回真空管アンプに合うケーブルを選ぶにあたり、まず提案したのが半導体アンプと比較して真空管アンプは物理的にどういうものなのかをインピーダンスと内部抵抗という二つの切り口で検証すること。真空管アンプはインピーダンス的にロー出し, ハイ受けが一般的で出力側のインピーダンスと入力側のインピーダンスの差分が大きく取れるケースが大半です。これは電気的にどういうことで、インターコネクトケーブルの振る舞いは半導体機器と比べてどう異なるのか…電源ケーブルでいえば真空管アンプの方が半導体機器よりも電源インピーダンスが高く内部動作電圧も高い訳で、これは電源ケーブル側からみるとどう異なるのか…を電気的に明らかにしています。
さらに言えばオーディオケーブルの試聴記事の多くは”低域が良く出る”とか”高域が伸びる”等、あたかもケーブルが何かを足しているかの如く書かれている(ように読める)記事が散見されますが、これは電気的には正確な表現とはいえず、個人的には”理想ケーブルは「マイナスゼロ」”…電気的に損失が限りなくゼロに近いもの、つまり入力された信号を些かもスポイルされず伝播されることを究極の目標として存在すべきものと考えます。
結果的に例えば”太いケーブルが低域がよく出る”という仮説があったならば、それは”断面積の小さいケーブルは低い周波数帯における損失が大きい傾向にある”とすべきであり、何ら技術的解説無しに単に良否を述べるのはオーディオアクセサリーの健全的発展に寄与するとは思えません。真空管アンプに関わる者の一人としてすべてのユーザーさんに理屈の面から電源ケーブルとインターコネクトケーブルを俯瞰した記事となればいいなと思っています。発売は2月19日ですので時期が来ましたら改めてご案内させて頂きます。
1/23 MUSIC BIRD収録(三本録り)
(1)3/20オンエア 「ELROG真空管 一本勝負」
これまで話題になっていたものの正規代理店が決まらず入荷も安定していなかったELROG真空管(ドイツ)の輸入元が決まり、今後安定供給される見込みとなったことから、いち早く300B, 274B, 211, 845を総まくりテストを行いました。
比較対象はもっとも広く使われているPSVANE WE300B, PSVANE 211/845など。
いつも最後に土俵入りするSV-91B/PSVANE WE仕様が今回は最初に。価格的にもPSVANE WEより2倍近い高級真空管であるELROGならではのことかもしれませんね。
これがそのSV-91B/ELROG仕様。電気的には同一でもサイズも違えば音も大きく異なるELROG。送信管で使われるトリエーテッドタングステンフィラメントも一役買って高域の伸びた浸透力と締まった低域は要注目です。91Bクラスになると300Bシングルでありながら現代の低能率スピーカーに使用されることも多い訳ですが、ELROG仕様はさらにその傾向を伸長させる可能性があるように感じます。かなり高価なセットアップですが一聴の価値ありです。
続いて…
PSVANE 211
ELROG 211
ELROG 845
送信管に関して言えば現行球がほぼ中国製という状況の中で特に845に関して言えば明るく輝かしいというイメージは強く浸透していますが、ELROGに関しては音の明るさに関しては同等であるものの、高域のギラつきは皆無でかなり精緻で音の粒子感も細やかな印象です。殊更にパワー感を表出するというよりは静かに余裕綽々に鳴る、という感じに近いでしょうか。聴感上のSNの良さが大変印象的でした。
(2)4/3オンエア 「決定!ジャズに最適な300B 一本勝負」 スペシャルゲスト:平野聡さん(キングインターナショナル)
二本目は素晴らしいスペシャルスペシャルゲストをお迎えしました。1970年代からジャズ一筋。手掛けたアーティストはトミー・フラナガン, マル・ウォルドロン, ミシェル・ルグラン, バリー・ハリス, エリック・アレキサンダー…その他多数。プロデュース作品「シー・チェンジス / トミー・フラナガン・トリオ」が1997年グラミー賞ジャズ部門ベスト・インストルメンタル・ソロ部門にノミネイトという輝かしいキャリアを持つ平野さんがスタジオに登場です。
平野さん(左)。実は平野さんは大のオーディオファンでもありJBLを特注の300Bプッシュプルで鳴らす達人。真空管一本勝負に出演するからには…ということでSV-P1616D/300B仕様をスタジオに持込み、各種300Bを挿し替えて最もジャズをホットに鳴らす300Bを平野さんに決めて頂いて試聴しようということになりました。
続いてはしっとりと濡れた繊細感で多くのファンを魅了してきた
PSVANE WE300Bそして新登場の ELROG 300B。4本(2ペア)で30万超え!
平野さんが選んだ300Bは何だったか…これはオンエアをお楽しみにお聴き頂きたいのですが、何しろゴキゲンだったのは平野さんが持ってこられたソースの数々。
いまから15年くらい前から現在に至るまで何度かけたか分からないほどの超テッパン試聴盤。
エリックアレキサンダーの「Heavy Hitters」。特に8曲目の「May Be September」冒頭のエリックのサブトーンを聴けばオーディオの素性が一発で分かるとまで言われたCDですが、これが平野さんプロデュースだったとは!
収録ではRVG(ルディ・ヴァン・ゲルダー)本人が作った世界に一枚のデジタルマスターで試聴させていただく僥倖に恵まれました。聞けばRVGスタジオにも6~7回行ったという夢のような話も飛び出しジャズファンならずとも必聴の収録になったと感じています。
(2)4/17オンエア 「高田録音 最新版 一本勝負!」 スペシャルゲスト:高田英男さん(エンジニア), 藤本草さん(プロデューサー), 藤本昭子さん(三弦)最後は真打ち高田英男さんが手掛けられた新譜をフィーチャーした一時間。音楽業界はもちろんオーディオ業界にも計り知れない影響を与え続けてきた高田さんの次なる作品はなんと邦楽。それもジャズピアニスト 佐藤允彦さんと地唄 藤本昭子さんの唄, 三弦(三味線), 箏が織りなす全く新しい音楽を聴かせていただく又とない機会になりました。
前列左から藤本草さん(プロデューサー),藤本昭子さん(三弦奏者),高田英男さん(レコーディングエンジニア)
今回収録で聴かせて頂いたのは高田さん持参の192kHz/24bitのマスター音源。邦楽というと枯山水に通じる枯淡の境地をイメージされるかもしれませんが、そこは高田録音。恐ろしいダイナミックレンジの広さに痺れること間違いなしのスーパーハイファイサウンド。佐藤さんのピアノが後ろにいて、三絃がその前に浮かび上がったところに昭子さんの声が凄いリアリズムで屹立する様子は、サウンドノベル(音の小説)のよう。その広大な世界観は聴く者すべてをノックアウトするに違いありません。
これがPCに取り込んだ音源のFFT。見事にアナログ変換後のレスポンスが理論値通り96kHzまでリニアに伸びていることが確認できます。昭子さんの唄(声)は喉だけでなく全身から振動が拡散しているようで、しっかりと質量感を伴ってスピーカーから放射される様子は高田さんならではの作品といえるでしょうか。
そして今回の最高のご褒美は昭子さんの生演奏。三弦の繊細な響きのニュアンスと人の声の実体感を一つの音源というパッケージメディアに収める難しさと共に生音のダイナミックレンジに迫る高田音源のクオリティの高さを感じて頂けるでしょう。
今回収録にご提供いただいた音源はCD, HR(ハイレゾ)ともに4/22リリースとのこと。タイトルは
「雪墨」です!CDはビクターから、HRはe-onkyo, MORAから配信される予定とか。是非チェックしておいてください!
1/25 Kさんリスニングルームお披露目会@横浜
今週最後のイベントは横浜のKさん宅へでのリスニングルーム完成ミニ試聴会。
Kさんとはヨドバシ秋葉原店での試聴イベントで出会ってからの間柄ですからまだ1年にも満たないのですが、逆にいえばKさんとの一年はたいへん濃密なものでした。そしてヨドバシ試聴会でKさんが気に入られた試聴システムそのままの構成でリスニングルームがこのたび完成したというのは私にとってもこの上ない光栄な出来事でありました。
お仲間を集めて完成のお披露目会をやるからとお誘いを頂いてお邪魔した部屋の心地よさは写真からも伝わってくるのではないいでしょうか。リッチな響きと低域に質量感のある音楽のための空間です。
Kさんが試聴会で気に入られたSV-Pre1616DとSV-S1616D+タンノイTurnberryの組合せ。今回はKさんのリクエストもあってSV-EQ1616Dの製品サンプルをお持ちしフルセットで聴いて頂きました。真空管アンプならではの倍音に満たされた音を聴きながらKさんが永く探し求められてきた音と音楽の在り様が私にもわかったような気がします。それは今まで数えきれないほど聴いてきたPre1616D+S1616Dの組み合わせよりも優しく豊かな音だった気がします。
特別参加のSV-EQ1616D。現在は暫定でターンテーブル内蔵のフォノEQをお使いでしたが、EQ1616Dに替えると俄然低域レスポンスが伸びて音の厚みが増して、音が体に沁み込むようです。
SV-EQ1616Dは1/31(金)から予約受付開始。発送は3月末スタートを予定しております。もうしばらくお待ちいただくこととなりますが是非ご期待頂ければ幸いです!