今週後半は東京。まずは”真空管アンプ一本勝負”収録のレポートです。今回の収録(2020/1/24オンエア)は久々のハイエンド真空管ブランド大研究!横浜のオーロラサウンドの新製品
PADA-300B(300Bプッシュプル)の魅力とサウンドを余すところなくお伝えしていきます。
綿密で基本に忠実、かつ大胆な設計アプローチは高級オーディオブランドの中でも異彩を放ち、国内はもとより海外でも高い支持を集めるオーロラサウンドの設計者である唐木シノブさん自らの解説を伺いながらその音を聴かせて頂きました。

モノグロック×2台構成の300Bプッシュプルでトランスドライブの交流点火とくれば当社でも15年以上前から
SV-86B,
LM86Bなど実績のあるゾーンであり、PADA-300Bの発売が決まってからずっと聴かせて頂きたいと思っていたのです。そして先日ステレオサウンド社の2019年度グランプリ受賞(12/13発行の雑誌Stereo Sound Vol.213にて詳報)の報に接し、お祝いも兼ねて番組にご登場いただきました。

写真を撮らせて頂いた現物内部。同じ300BプッシュプルでもLM86Bとは
シャーシ内部の様相が全く異なります。
回路的な最大の特徴は前段半導体のディスクリート, 出力段300Bプッシュプルのハイブリッド構成ということになるでしょう。いままでの真空管ハイブリッドは電圧増幅段が真空管で出力段が半導体かクラスDのいずれかでしたからまさに逆。トランスドライブ,無帰還の交流点火300Bプッシュプルという古典回路+ハイブリッドとい温故知新的発想が実に素晴らしい。
実際音を聴いてみると私がいままで300Bプッシュプルに投影してきたイメージと全く異なる出音に永世ゲストTさんも大変驚いておられました。コンベンショナルな真空管アンプの設計手法では三極管プッシュプルは中低域の厚みと倍音感が最大の音色的特徴であり、ヴォイシングチャート的には最も左下のゾーンになるのが普通です。

これが最新版の当社アンプのヴォイシングチャートです。Y軸がフォーカス, X軸が温度感, Z軸(色の濃さで表現)が倍音感で音を可視化する試み。この図でも300Bppは最も左下で色も濃い…有り体に言えば音が太く音触(音の手触り感)がゾリっとしているゾーンであることが分かります。
しかしPADA-300Bは全く傾向が異なり先ずトランジェント感(音の立ち上がり)が速い。そして音が明るく開放的。上のチャートでいえば③の左, ⑩の上あたりのポジションの音です。これは想像ですがLundahl(ルンダール/スウェーデン)製出力トランスが音作り上の大きなポイントになっているのではないか…この出力トランスが面白いのは一般的に二次側には4/8/16Ω等複数のタップを出して負荷(スピーカー)に対しての最適インピーダンスを得るところ、1タップで4~16Ωに対応している点が極めてユニークです。負荷インピーダンス一定という回路設計上の前提条件よりも実負荷であるスピーカーの実態(インピーダンスが周波数によってダイナミックに変動)に合わせた設計になっていると言えるのかもしれません。
唐木さん選曲で何曲か聴かせて頂くと特にギターの鳴りが良い事に気づきます。言い換えれば音がハイスピードなのです。唐木さんはブルースギター弾きとしても知られた方。定期的にライブを行っておられるミュージシャンでもあります。そういう意味でも音は人なり…作る人間が違えば同じ形式でも出てくる音は全く違うということに気づかされた一時間でありました。

最後はお楽しみタイム。PADA-300Bは出力管なし, PSVANE WE300B, 高槻300Bの3タイプから選べるようになっていますが、参考試聴でTさん所有の本家Western Electric 300B(デートコード9952)を使わせて頂いて試聴していますので是非オンエアで体験頂きたいと思います。微小レベルの情報量、特に高域方向の空気感の良さ等、PADA-300Bの音作りに極めてマッチしていることが確認出来ました。唐木さんも本家の復活再生産を心待ちにしておられるとのこと。早くその日が来るといいですね!

左が唐木さん。今回も収録にご参加いただき有難うございました!唐木さんによれば全国有名オーディオ店経由で製品の貸出しも可能とのことですので、是非ご自宅のスピーカーでPADA-300Bの素晴らしさを体験頂くきっかけになればと思っています。まずはオンエアでその開放的なサウンドを体験してみて下さい。