例年は少し静かな二日目の朝ですが、昨日来られなかった皆さんが駆けつけて下さった感もあってこの状況。二日目はランク×ジャンル別 システム構築ガイド(初級/中級/上級編)の流れでいく予定だったのですが急きょ進行を変えて初日の内容のリフレイン的コンテンツも含めてセミナー的なデモを行うことにしました。

初級編ではシングルアンプを最良の条件で使っていただくための条件として
1.スピーカーの能率が88dB/w/m以上
2.口径25㎝以下のフルレンジまたは2ウェイと定義づけている訳ですが、皆さんからは能率については分かるけれども口径については合点がいかない部分もおありになるだろうと想像し、あえてシングルでJBL 4344を鳴らす実験も行いました。
F0(最低共振周波数)の低い大口径ウーハーを擁したマルチウェイスピーカーではアンプから供給されるエネルギーの大部分をウーハーが消費する形となります。複雑に変動する音楽信号によってウーハーの動き方も絶えず変化し、ウーハーからアンプに戻る逆起電力でアンプは常時揺さぶられている状態になります。例えて言えば揺れている地面の上に建っている家のような状態となって混変調歪が著しく増加、高域の明瞭度が下がって抜けの悪い音になってしまうことを実際に体験頂きました。
中級編では多極管/三極管プッシュプルが登場し、逆起電力にビクともしない駆動力が得られていることを実感できたと思います。更に上級編ではSV-91B, SV-8800SE, SV-284D(バランスドシングルMONO)が登場し、全帯域のスピード感がビシッと揃ったスピーカーの制動力の高さを音でお示しできました。同じ音量,同じ曲でも中級と上級ではウーハーのふらつき方が全く違うことに気づかれた方もいて4344を持ってきてよかった!という感じです。

特にSV-8800SEやSV-284Dで鳴らした時の風圧を感じるような低域は一般家庭ではなかなか得難い世界ですが、環境さえ整えばオーディオでこんな音も聴けるんだ、というドリームの部分もあったかもしれません。

お昼頃からは更に人出が増えて常時この状態。明らかに例年よりもお客さまが多い状態です。それは午後のプログラムへの期待の高さだったかもしれません。2年越しで実現することとなったSV-EQ1616D(二次試作)の音を聴きたいという皆さんが大挙してブースに詰め掛けて下さいました。

スライドを用意しSV-EQ1616Dが通常のフォノイコライザーを遥かに超えたユーティリティを備えたハイスペック機であり、これ以上”1616”(イロイロ)なイコライザーはないことを実際に音楽を聴いて理解頂けたのではないかと思います。

二次試作で機能追加したトータルゲイン(HIGH/LOW)はカートリッジの出力電圧の差異によってアンプのヴォリューム位置が大きく変わることを回避できるだけでなくROLL OFF(高域側のトーンコントロール的微調整)によって自分の聴きたいゲイン,音のバランスが容易に得られる結果となり、機能追加して本当に良かったと思っています。従来”沈黙の機器”であったフォノイコライザーが雄弁に音楽に影響を与える快感を是非多くの方に味わって頂ければと思っています。早ければあと約半年…やっとここまで来たという感じです。
そして今日のメインイベント「JBL4344で聴くお宝テストプレス盤(ロック編)」も大入り満員!!いわゆるオーディオショーでの企画としては未だ嘗てない内容であるだけに多少心配もしていたのですが「これを聴きにきたようなモンです」という方が本当に沢山いらっしゃって私の方が驚いたというのが本音です。


解説はコレクターのTさん。今回のために貴重な音源をご提供頂きました。試聴した曲目は
こちらをご覧ください。

三曲目、Steely Dan ”Aja”のところで突然の道場破りが…Steely Danのことは何でもご存じのYさんがAjaのオリジナル盤5枚(エディション違い)を携えて登場されました。Ajaのテストプレスが聴けるチャンスは二度とない…ならば我がオリジナル盤と比較試聴してみようじゃないか!という飛び入り企画です。Matrixが共通のAB1006のオリジナル盤もあるということで急遽オリジナル vs テストプレスの対決となりました。
会場の皆さんも大変驚いておられたのがオリジナルとテストプレスの音が全く違うこと。この違いは優劣を言っているのではありません。帯域バランスや音の質感が根本から違うのです。オリジナルは良い意味でメリハリがあり高域もスッキリ伸びていて低域もタイト。対してテストプレスは中低域の厚みが凄く相対的に超高域はナチュラルな雰囲気です。好みによってはオリジナルの方が良いという方もおられるでしょうし、釜だし直後のようなテストプレスに軍配を上げる方もおられる方もいらっしゃるでしょうが、いずれにしても両者の差は実に大きなものでした。会場の皆さんは稀有な体験をしたといえるでしょう。
そして今回の真空管オーディオフェアで私が最もうれしかったハプニングをご紹介させて下さい。

わが友、ディスクユニオンの生島昇さん一年ぶりの登場です!いままで誰にも申し上げておりませんでしたが
昨年の真空管オーディオフェア直後、突然の病に倒れられた生島さん。一時はかなりシビアな状態であった訳ですが約1年間の闘病生活を経て見事今日”現場復帰”を果たされました!
早速初日にも聴いて頂いた
井筒香奈江さんのダイレクトカッティング盤新譜(11/27リリース)のPRに自らマイクを持って熱弁をふるっておられる姿に感動を抑えることが出来ませんでした。MUSIC BIRDの番組にも復帰が決定!ということで二重の喜びが会場にも溢れることとなりました。

そして今回の人気者、レリック(旧オーディオラボオガワ スピーカーサービス)のお二方。右が社長の田林さん、左が皆さんお馴染みの佐藤さんです。

レリックコーナーは朝から最後までずっとこんな感じ。いかに真空管アンプユーザーが旧い世代のスピーカーを大切に使っておられる一方、多少なりとも現在の状態に不安を抱いておられるということかもしれません。今回私どもが持ち込んだJBL 4344がレリック渾身のメンテ品であることもあり、皆さんその信頼性の高さを理解して様々なお問い合わせがあったようです。一番多かったのはJBL LE8T(20㎝フルレンジ)のエッジ交換だったとか。お二人に任せれば新品同様になって還ってくることでしょう。

そして毎年私どものブースに足を運んで下さる ”日本のスピーカーの父”佐伯多門さん(ダイヤトーン)からもお話を伺うことが出来ました。目下スピーカー100年の歴史をテーマとした本の執筆中ということで益々ご活躍されていることは我々後輩にとっても大変な励みになります。


そして写真家平間至さん。日ごろSV-Pre1616D+SV-S1616D/300B+B&W 805D3で80年代UKロックを聴かれている平間さん。”真空管アンプが非力だなんて全くの誤解です”とご自身の体験談を皆さんにお話して下さいました。

そんな訳で気がついたら終わってた…そんな感じの2日間。波乱の幕開けから感動のフィナーレまで今まで出展してきた20回の真空管オーディオフェア出展の歴史の中で一番熱く盛り上がった…そんな2日間だったような気がします。とてもとても充実して楽しい2日間でした。ご来場いただいた皆さん、本当に有難うございました!!