真空管オーディオフェア ミニライブ”たいようの谷”(10/13 16:30~)
2019年 10月 06日

今日はこの”たいようの谷”が生まれた経緯を備忘的に記しておきたいと思います。きっかけは去る五月、ゴールデンウィーク最後の日にショールーム開放日特別編として愛知に来られていた四家さんをお招きして試聴室でミニコンサートを行いました。その様子はこちらのエントリーをご覧ください。
チェロの生音を間近で聴ける機会はそうそうありません。オーディオにおける”原音再生”とは何かを考えていただくきっかけになれば良いと思い企画したのがこのミニコンサートでした。
実はこの時、四家さんにもお客さんにもお伝えせずレコーダーを回していました。非常に簡易的なもので一本のマイクをon axis(楽器の軸上)に近接配置、もう一本はambient(残響)用に試聴室の天井付近に立ててステレオミックスするだけというシンプルなもの。もちろんリバーブもコンプレッサーも一切かけていない”素の音”(96kHz/24bit wav.)です。四家さんに記録音源としてお渡しするためだけの為に録ったものだった訳ですが、音を送ったところ”これをCD化したい”というお話が帰ってきて録った私がいちばん驚きました。そしてあれから約5ヶ月が過ぎ手許に届いたCDのタイトルが”たいようの谷”です。
ジャケット内側にはこんな四家さんのコメントが書かれています。
ある晴れた5月の振替休日の昼下がり。
演目はバッハの無伴奏組曲三番、五番、一番。
(中略)
その録音を後日聴き返してみると確かに五番はいろんな事故などありますが演奏が面白くて何度も
このコンサートの演奏を聴いて音楽ってなんだろうと改めて考えました。またもう少し多くの皆さん
四家卯大
音源を聴いていただくと分かりますが、決して広くない試聴室の中で聴衆の皆さんが固唾(かたず)を呑んで四家さんのチェロの音に集中している様子が手に取るように伝わってきます。それはまさに”無音の緊張感”ともいうべきもので、張りつめた空気の中で演奏する四家さんと聴衆の皆さんが意識のうえで完全に一体化している瞬間の記録とも言えるでしょう。曲終わりの拍手をCDで聴いた時、物理的にも精神的にも演者と聴衆が如何に近い関係性でこのコンサートが行われたかを皆さんは知ることになると思います。
今まで多くのレコーディングに立ち会ってきました。その過程でノイズを消し、音程を修正し、リバーブを掛け、まさに厚化粧するプロセスを目の当たりにしてきた訳ですが、この”たいようの谷”は一切の修正をしない”現場そのままの空気”を伝えています。フェアのミニライブでもこの雰囲気をお伝えできたら…と四家さんと一緒に考えているところです。