今日はMUSIC BIRD収録。11月~12月オンエア分の二本録りでした。今回のテーマは「廉価帯 VS 高級機 同じタマで一本勝負」。
従来はアンプ固定で様々な出力管を挿し替えて音の違いを楽しむパターンが多かったこの番組ですが、今回はその逆パターン。出力管固定でアンプを替えた時に音がどう変化するかの公開実験です。
オーディオという趣味は厄介なもので成果物とでもいうべき音には形もなければ色もありません。そしてまたその音はモノの薫りのように一瞬でその存在を消してしまう陽炎のような存在。そんな危うさを秘めた存在だからこそ私たちオーディオファンはその一瞬の音の輝きや命に全身全霊を掛け、気づけば大変な時間とコストをかけている訳ですが、心のどこかで”高いモノほど良い音がする”という自己暗示にかかってしまっているのではないか…と感じたことはないでしょうか?
今回の収録は自ら開発を手掛けたアンプを使い、同じ出力管,同じ楽曲,同じゲインで普及価格帯と高級モデルを聴き較べるという究極の踏み絵企画。多くのMUSIC BIRDリスナーの皆さんと一緒にオーディオにおける”価格神話”に2回シリーズで深く切り込んだ収録となりました。
試聴パターンは
(1)SV-S1616D/PSVANE 300B
(2)SV-91B/PAVANE 300B
(3)SV-S1616D/PSVANE WE300B
(4)SV-91B/PSVANE WE300B
価格的に約4倍の差(10万円強~40万円オーバー)の組合せで比較を行ったという訳です。


結果は実際の音を聴いて下さる皆さん自身にご判断を委ねるべきと考えますが、今回たいへん印象に残ったのは
”廉価帯モデル+高級出力管”の組合せが大健闘したということ。実際S1616D+PSVANE WE300Bは300Bシングルならではと透明感が非常に際立つ美音であったことを報告させて頂きます。
第二回”845シングル編”(12/13オンエア)では
SV-S1628D/845と
SV-284D/845が登場。出力管も最安値の
PSVANE 845と最高価格の
PSVANE WE845(時価約8万円ペア)を用意しました。
試聴パターンは
(1)SV-S1628D/PSVANE 845
(2)SV-284D/PAVANE 845
(3)SV-S1628D/PSVANE WE845
(4)SV-284D/PSVANE WE845価格的に約2.5倍の差(約15万円~35万円オーバー)の組合せで比較を行いました。申し遅れましたが第一回,第二回ともプリは
SV-300LB(300Bプリ)で固定です。
この比較試聴も非常に興味深い結果となりました。

845は300Bと同じ直熱三極管でありながら音楽の描き出し方が全く異なります。300Bが中低域の響きの良さ,中高域の繊細さが最大の特徴であるのに対し。845は高域の輝かしさと伸び,締まった低域が最大の魅力である訳ですが、S1628D,284DともにWE845に替えると中域のしなやかさと弾力が現れて、音楽のニュアンスや抑揚感の表現力が数段アップする感じです。

これが
PSVANE WE845。なかなか入荷しない希少球です。
次号”管球王国 VOL94(10/28発売予定)でこの組み合わせの試聴レポートが出る予定ですので併せて参考にして下さい。
今回二本で計8パターンの試聴を行った訳ですが、オーディオの価格神話とは何なのかを改めて考えるきっかけになったと感じています。何度か申し上げているように最近のオーディオの価格の二極化は目覚ましいものがあり、上を見えればキリがない状態です。ハイエンドにしかない突き詰めた個性があるのは認めつつも”何十倍(以上)の価格差ほどの音質差があるのか?…”と疑心暗鬼になった経験は誰しもがお持ちでしょう。
今回の実験はオーディオ市場全体を俯瞰すればいずれも低価格品ということになりますが、その一方で価格と音質を推し量る材料として一石を投じることが出来たのではないかと考えます。ぜひ皆さんもオンエアで体験して下さい!現在コミコミ5とコミコミ100が人気沸騰中です。