私も元BCL&アマチュア無線少年ですから無類のラジオ好き。過去二作のStereo誌真空管シリーズは静観してきましたが、数か月前に関係者から”次は真空管チューナーをやります!”と伺った日からずっと楽しみにしていたのです。昨日編集部から”できたてホヤホヤの第一号を製本所からとってきましたので送ります”と連絡があり、今日現物を作り試聴させて頂く機会に恵まれましたので早速レポートしたいと思います。
1. 製作~誰でも完成できる半完成キット~


で構成されていて組立マニュアルを超えた発展性のある内容になっています。早速製作ガイドを見ながら製作に入る訳ですが必要工具はプラスドライバー(#2)とラジオペンチのみということで誰でも30分かからずに組立が出来る内容です。



上の写真くらいのしっかりしたプラスドライバーでグリップ部が太めでないとネジが回ってくれずに悪戦苦闘という場合も十分あり得ます。これさえクリア出来れば、その他はまったく問題はありません。



2. 試聴~ポイントはアンテナ~
さっそく聴いてみます。皆さんの興味はこのチューナーがオーディオグレードとして本当に使えるクオリティなのか?…ということだろうと想像します。結論的にはアンテナ次第。受信感度さえ確保できれば全く問題ないことが確認出来ましたので安心して下さい。

この状態で受信すると雑味のないクリアな音質を心ゆくまで楽しめます。皆さんのメインシステムに入れても全く違和感のないクオリティです。ひと通り聴いたあとに常用のアナログチューナーと比較してみることにしました。


いずれも音質的に評価の高いアナログチューナーの名機です。同じアンテナ線から信号を供給し、それぞれのチューナーの出力をプリアンプの入力に別々に入れて瞬時に切替えられる環境を作って比較します。
バリコンアナログチューナーの最大の魅力は滑らかな音質ということに尽きます。FMを聴くとNHKの音量が少し小さく聴こえる経験をされた方が多いと思いますが、それは裏返せば民放各局が送出時にかなりコンプをかけて小音量時のレベルを持ち上げる代わりにピークを潰している証左である訳です。いわゆる高級チューナーはそのデメリット(聴感上の音の粗さ)をうまく回避できています。比較のポイントはLXV-OT8がDSP方式でこの点においてどれだけバリコンアナログチューナーに迫れているかという点でした。
プリアンプのリモコンで切替えながら聴き較べてみた訳ですが、結論的には大健闘でDSP方式によくみられる高域の粉っぽさ(滑らかさに欠ける質感)が感じられないのは12AU7真空管バッファ段が大きく寄与していると言えると思います。感度的にはKT-9700と同等、QUAD FM3よりも若干優れています。DSP方式ならでは個性として選曲ポイント調整がクリテイカル(受信ポイントがアナログに対して狭い)ことが最初は気になるかもしれませんが、慣れれば何ということはありません。
3. グレードアップ~タマを替えてみる~
良い音聴けてひと安心。となると自然に”もっと良い音を!”ってなるのがオーディオ好きの性(さが)というか業(ごう)。製作ガイドにはアンテナの強化,真空管の交換,カップリングコンデンサーの交換が挙げられていますが、回路的にも内容的にもカップリングを高級化することのメリットよりもバッファ段の12AU7を替えた方が遥かに効果が大きいと判断し手許にあったMullard CV4003に替えてみることにしました。


※本ポストの画像,内容は音楽之友社Srereo編集部のご厚意により発売前に掲載の許可をいただきました。この場をお借りし御礼申し上げます。