対象が固定化されたものでなく一瞬で消え去る儚さ(はかなさ)をもっているところ。そしてその陽炎(かげろう)のような対象を再固定化するという点において写真とオーディオは極めて近い存在に思えます。今は手のひらに載るようなサイズのデジタルアンプが数千円で買えて100W以上の出力で楽しめる時代。スマートフォンのカメラで1000万画素以上の綺麗な写真撮ることができる、そんな時代。
そんな今、小出力なのに大型で消費電力の大きい真空管アンプの生命力に満ちた音に魅せられた私が、写真を”記録”という手段を超えた生き生きとした魂を残すための”表現”であると主張する平間 至さんに出会ったのは或る意味必然のことだったかもしれません。
8月号のStereo誌の特集「Summer Craft party~真夏のオーディオ工作」(7/19発売)では単に製作プロセスをトレースするのではなく、モノづくりの楽しさと自分にもできるかも…という読者の皆さんのマインドに訴える内容にしたいと思い、平間さんと私の合作という方法を採り、モノづくりを楽しみながら…時々楽器を弾きつつ、ゆる~く進めている感じが出ればいいなと思っています。
とはいえ、かつてアマチュア無線の免許をお持ちでケーブルの自作などもされる平間さんのこと。予想以上にスムーズに製作が進んでいます。普通は急いでやっても3日はかかるキットです。なかには一ヶ月くらいかけてじっくり取り組まれる方もいるオール手配線。確かに工数は多いですが、その分楽しさと出来上がった時の感動もプライスレス!という雰囲気満載の記事になるでしょう。
「目で見たまま写真が写っても、そこには何の感動もない。逆に言えば目で見たものとは違うから写真には感動があるわけですね。そういう意味で言えば、僕は真空管アンプをひとつの楽器としてとらえていることになります。忠実に再生する装置ではなく、音楽がより生き生きと聴こえるために通す楽器だととらえると、分かりやすい」
…以前プリ不要派であった平間さんにとって、今回のキット製作体験が更に音楽の生命力と躍動感を感ずる体験となれば、これほどうれしいことはありません。乞うご期待!