今日は仕事を少し離れて自己研鑽のためのお勉強。某大学主催の公開講座「トーンマイスターワークショップ」に参加させて頂くチャンスに恵まれました。主催大学の学生さんに加え東京~大阪までのプロ,セミプロの皆さんが受講される中に混ぜて頂いた形です。

講師はドイツ・ベルリンより来日したトーンマイスター、
Florian B. Schmidt氏とAki Matusch氏。トーンマイスターという呼称はご存じの方もおられると思いますが、1949年よりドイツの音楽大学ではじまった録音・音響技術と音楽的知識・センスをもった「音に関するマスター = トーン マイスター」を養成するトーンマイスターコースを修了した人にだけ与えられるもの。その教育は、音楽収録や中継において「より芸術的な音楽の伝達」を行うために録音・音響技術のみではなく
演奏や音楽理論をはじめ管弦楽法,総譜演奏,演奏解釈批評など演奏家と同等以上のスキルを身につける必要があるプロフェッショナルです。
今日はクラシック音楽のレコーディングがどのように行われているか、実際のプロセスを見学させて頂きながら解説を受けられるという贅沢なもの。コンテンツは
・セッションレコーディングの方法とその哲学
・録音事例の紹介
・マイキングと機材について 無指向性 A-B Stereoと XY・MS・ORTFの違いについて
・セッションレコーディングとディレクションについて
・実際のセッションレコーディング
・エディティング、マスタリングについて
という専門的なものでしたが、良い音とは何か?という点においてオーディオにも共通するテーマだったと感じています。

ホールのホワイエ(ロビー)が今日のコントロールルーム兼セミナー会場。レコーディングの基礎理論を学んだあと実際にマイキングをしてセットアップを決めていきます。

フローリアンさんのマイキング。無造作にセッティングしているようで位置,距離,角度…すべてに理由がありノウハウが込められてます。

幾つかの変更を経て決まったセッティングダイヤグラム。

マイクプリは
RME。プレイバック系もRMEで統一されていました。

今日はアコースティックギターのレコーディングでセッション1はソロ。セッション2はデュオです。

今日一番驚いたのはトーンマイスターという仕事が単に
音だけでなく深く音楽そのものに関与していること。言い換えればレコーディング技術だけでなく作曲家の意図,演奏家の表現…その全てを高度に融合させるのがトーンマイスターという存在であることに気付いた次第です。時に演奏者にインスピレーションを与えるような発言を通じて演奏そのものにコミットしている様は或る種痛快でした。

演奏を聴きながらスコアにリマークを入れて後のエディット時に活用します。

これがフローリアンさんのスコア。リマークがビッシリ!
録音技術(アンプでいえば回路設計)の先にある音楽性の大切さ。レコーディングエンジニアリングが決して演奏会場の音そのものを録るだけの仕事ではなく、オーディオ開発と同じ人間臭い仕事(=自分の中の”良い音”のイメージを具現化する意味においては同じ)なんだと感じた今日でした。伺うことが出来て本当によかったです。