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40年間の空白を埋めたもの

今日から最大10連休という方も多いことでしょう。当社も今日から5/5まで配送,技術部門がお休みを頂戴いたします。ご不便をお掛けしますが宜しくお願い申し上げます。

今月を振り返ってみますと試聴のお客さまが多く賑やかな4月でした。今週、岡山からお越しになったTさんもそんな方の一人。偶々私と同じオートグラフ(タンノイ)お使いということで、是非このスピーカーでアンプを聴かせて欲しいというお申し出を頂戴しました。

印象的だったのはTさんが40年間も所有されていらっしゃるオートグラフを聴いた記憶がないと仰ることでした。大学合格のお祝いにお父さまがプレゼントして下さったものの実家から離れた下宿生活。就職後も単身赴任が続いたこともあり、気づいたら40年経っていた…オートグラフを鳴らした記憶も音の記憶も全くないので現用のB&W801と音がどう違うのか確認してみたい…真空管アンプで、というのがTさんのご希望でありました。
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見え難いですがオートグラフは部屋の角です。TさんにはB&Wとタンノイという能率もインピーダンスも音色(ねいろ)も異なるスピーカーを一台の真空管アンプで鳴らすのであれば最大公約数的に多極管プッシュプルをお奨めしたい、それもKT150が横断的に両方のスピーカーをよく鳴らしてくれる筈…とお奨めしました。そこで300BシングルとKT150プッシュプルのデモ機を持ち込んで鳴らしてみることにしました。
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オートグラフを300Bで鳴らした時の独特の芳香と表現の濃さは他の真空管アンプからは得難い稀有な世界です。本来はシングルアンプ使用のための2条件(①能率88dB以上, ②フルレンジか25cm以下のフルレンジあるいは2ウェイ)からすれば38cmのオートグラフはプッシュプルでなければならない筈ですが、能率96dB(実測)という超高能率から例外的にシングルでも大丈夫です。他にはALTEC A5/A7などもシングルで鳴らせる大型スピーカーに該当します。

TさんのCDを300Bシングルで色々と聴いたあとSV-P1616D/KT150仕様で同じ曲を聴いてみます。正直に申しますと個人的にオートグラフをKT150プッシュプルで鳴らす積極的動機は希薄でありました。それは私の想像力(イメージ)において「タンノイは300B」という印象が強く創り上げられていたからとも言えます。

嘗て五味(康祐)さんはオートグラフをマッキンC22+MC275で鳴らされていました。近年再公開されている五味さんのシステムの音を実際何度か聴くにつけ、やはりオートグラフは300Bで鳴らさなければならない…という強い刷り込みのような或いは或る種の教えのようなものが自分を押さえつけていたかもしれません。


果たしてKT150は意外なほど良い音でオートグラフを鳴らし始めました。いわゆる”薫り”のような独特の個性や油絵のような表現の濃厚さが僅かに希薄になっている代わりに爽やかで屈託なく広々とした音場が眼前に展開します。300Bで聴くオートグラフを音像的と言うならKT150プッシュプルは明らかに音場的。それは多極管プッシュプルを卒なく設計した時に現れる帯域の広さとも決して無関係ではありません。少し拍子抜けするような、呆気なく良い音で鳴ってしまう、その状況に或る意味で虚を衝かれたような気持になりながらTさんのCDを聴き続けていくうちKT150という出力管ならではの多極管でありながら中低域の解れた量感の魅力を改めて認識しました。これもTさんとの出会いなければ長くお預けになっていたことかもしれません。

かなりの時間をかけて様々な角度から聴かれたあとふぅ…と息を吐かれて「たいへんよく理解できました。KT150に痺れました。」と仰ってSV-8800SEのKT150の完成品をオーダー下さいました。40年間おそらく一度も鳴らしたことのないオートグラフが目を覚ますのに相応しく、同時にB&W801をノーイクスキューズで鳴らすことが出来るアンプ…数時間の試聴でその決断が出来たのもTさんの心のなかで音が40年間オートグラフの音のイメージ、そして音楽好きだったお父さまの想いがTさんのなかで虚から実に転化したからなのだと思います。



by audiokaleidoscope | 2019-04-27 23:59 | オーディオ

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